安倍政権は今月、集団的自衛権の行使容認を閣議決定した。安倍晋三首相は、朝鮮半島有事(戦争)の際、避難する日本人を乗せた米軍艦艇を自衛隊が守る想定などを挙げて、その必要性を説く。朝鮮半島有事の「当事国」となる米国と韓国の識者は、今回の閣議決定をどう見るのか。

■行使の容認、良いステップ デニス・ブレア氏

集団的自衛権の行使を認める閣議決定は、日本にとって良いステップだ。

これまでの憲法解釈は日本や友好国、アジアの利益のための行動を妨げてきた。純粋に軍事的な観点からは、日本が米国の同盟国として両国共通の利益のため、自衛隊を使う際により柔軟性を示すことを望む。

日米両国が能力に合った貢献をし、共通の目標を共有する全面的な協力ができることが望ましい。北朝鮮による攻撃は第一に韓国、次に日本、第三に米国を脅かす。日本が今後、全面的な協力国となり、脅威にさらされた時に自衛隊を送れるようにすべきだ。

米軍は日本の市民を危険な場所から避難させることができ、過去にも実施した例がある。その数はかなり少ないが、余力があればやる。だが、救出作戦を計画する時、自国民のように扱うことはしない。例えば、(救出を求める)米国人100人と日本人3千人が危険地帯にいる時、米国が追加の航空機や艦船を送ることはないだろう。米国は協力はするが、追加の部分は日本の責任だと考える。

米国は英国やフランスとの間では、協力して全ての市民を避難させるという明白な合意がある。危険な状態にある国から救出する際は自国民のように扱うもので、米軍は英仏軍と全面協力する。日米間でも同様の合意をかわすべきだ。日本は他国から恩恵を受けられるし、日本も自国民と同様に他国の市民の救出に貢献することになる。

(米艦の防護も)良いことだ。日米両国は任務達成のため、互いに最高の能力を発揮できるようにすべきだ。ただ、軍事的な現実は流動的で、状況がどう変化するか事前に予測するのは難しい。安倍政権は与党協議で15の事例を示した。事例は説明のためで、現実は少し違うことを理解してほしいと思う。実際に自衛隊が他国の軍と行動を共にするとき、任務を遂行するために柔軟性が必要だ。(聞き手・渡辺丘)

67歳。米海軍に入り、太平洋軍司令官などを歴任。退役後、1期目のオバマ政権で2009~10年、情報機関を統括する国家情報長官を務めた。

自衛隊の韓国入り、難しい 趙世暎(チョセヨン)氏

安倍晋三首相は集団的自衛権を説明するとき、子どもを抱く母親のパネルを使って、日本人の救出を象徴的に訴えている。国民にアピールしやすいと考えているのだろう。

しかし、実際に朝鮮半島の有事になれば、自衛隊は公海に展開する米軍の空母を護衛したり、補給活動をしたりするなど様々なことが連動して起こる。米国が日本の協力を望むのはこうした例ではないか。

韓国国民の一般的な感情としては、日本が韓国に対し集団的自衛権を行使することは受け入れられない。韓国の領域に自衛隊が入ってくることを検討する余地は今のところない。

ただ、集団的自衛権の問題の本質は安全保障だ。使うかどうかは別として、現実に起き得ることの対応は考えなければならない。緊急事態になれば、韓国にいる日本人の輸送のために、場合によっては自衛隊が韓国に入ってくる必要が出てくるかもしれない。

だが、双方が「検討が必要」と言えないのは、安倍政権にも責任がある。安倍首相は靖国神社に参拝した。慰安婦問題をめぐる河野談話の検証結果を発表した直後に、集団的自衛権を認める閣議決定をした。こうした状況では、韓国内では感情論が先行し、安保の議論に入れない。

集団的自衛権を使う想定例の大半が朝鮮半島の有事なのに、肝心の日韓の連携が議論されていないのはお互いに不幸なことだ。安倍首相は議論を進めたいのなら、過去の歴史への反省を示し、韓国の信頼を得る努力をしてもらいたい。(聞き手・広島敦史)

52歳。84年に外交官になり、3度の日本勤務などを経て外交通商省(現・外交省)東北アジア局長。昨年、同省を退職し、現在は東西大特任教授。