アジアインフラ投資銀行(AIIB)の設立に向けた第一歩は、2014年10月、20カ国が中国の動きに賛同することで踏み出された。豪州、日本、韓国など米国の同盟国は、中国からの熱心な働きかけにもかかわらず不在だった。しかし、支持はその後広がり続け、参加表明は、豪州、韓国を含めた50以上の国・地域に達した。

主要7カ国(G7)の中では英国が第1号となり、ドイツフランスイタリアが直ちに続いた。カナダも検討していると伝えられておりこのままだと、G7のなかで日本と米国だけが不参加となる。

日本は当初から消極的だった。アジアの新興国のインフラ整備のための資金需要は、アジア開発銀行(ADB)でまかなうことができると主張してきた。しかし、ADBが12年に出版した報告書によれば、アジアの32カ国にのぼる新興国はインフラ整備のため、10年から20年までに合計約8兆2千億ドルが必要だという。年平均で計算するとADBの資本金の数倍となり、ADBだけでその需要を満たすことは無理な注文だ。

AIIBのガバナンス、透明性など、日本が抱いている懸念はもっともだ。中国がこうした点についてあまり芳しくない実績しか持っていないことや、環境保護などに対する優先順位が低いことを指摘するのは正しい。しかし、日本政府はAIIBの外部からこうした批判をするよりも、内部に入ってAIIBがこうした点で高い水準を達成するよう、直接的、積極的な役割を果たすべきではないか。

日本が相当額の出資をすれば、中国が最大の出資国として大きな影響力を持ち、銀行自体が中国のいいなりになるという不安も和らげることができる。日本が参加しないことは戦略的な誤りだ。

安倍政権にとっての課題とは、日本が果たしてAIIBに参加すべきかどうかではなく、参加しないで済むのか、ということだ。

日本が不在のAIIBができれば、東南アジア諸国連合(ASEAN)各国の政策決定者は、中国をこの地域で開発力、資金力を備えた唯一の大国とみなすようになるかもしれない。最終的に、日本の中国に対する立場はさらに弱まる結果となる。

AIIBは日本にとって二つの点で「希望の光」となりうる。ひとつは、日本が中国と協力して、将来の開発事業のお手本を作る機会になるということだ。もう一つは、日本がASEANとの関与を深める場ともなりうることだ。

日本は参加の決定を急ぐべきだ。地域との連携を深めることが自国の国益につながるという現実と向き合う必要がある。

(Tang Siew Mun シンガポール東南アジア研究所上級研究員)

◆英文は朝日新聞の英語ニュースサイト「AJW」のForumに掲載します。