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書評「C I Aの秘密戦争」組織変容のプロセスを克明に   by limitlesslife
書評「C I Aの秘密戦争」組織変容のプロセスを克明に

マーク・マゼッティ著 小谷賢監訳・池田美紀訳

中東の悲劇の根底には「憎悪」が横たわる。
では、誰が憎しみの種をまいたのか、、、。

2001年の「9・11米国同時多発テロ」は、
瞬く間に全米を「報復」の二文字に染め上げた。
当時のブッシュ大統領は、オサマ・ビンラディン率いる
アルカイダの犯行を断定。
アフガニスタン空爆からイラク戦争へのめり込んでいった。

米国は「テロとの戦い」に手段を選ばない。
その象徴がC I A(中央情報局)の軍事組織化だ。

本書は、大統領に世界情勢を伝えるスパイ集団C I Aが
9・11後、テロリスト暗殺機関に変わるプロセスを克明に描く。
C I Aは米軍と縄張り争いをしながら「標的殺害」へと突き進む。
現大統領のオバマは、暗殺ミッションに無人機、ドローンを盛んに使う。

ドローンは中東から何千キロも離れた米国でパイロットが操る。
衛星経由なので、数秒の「遅れ」があり、誤爆が絶えない。
パキスタンだけでも400回以上のドローン攻撃が行われ、
数千人の市民が亡くなったと言われている。

オバマは「アラビア半島のアルカイダ」のイエメン・キャンプには、
アラビア海の小艦隊から巡航ミサイルを撃ち込ませた。
当初、イエメン軍によるテロ撲滅作戦と発表されたが、
ミサイルの破片に米国のマークがくっきり。
死者の大半は市民で、
女性や子どもの遺体の映像がYouTubeで世界に流された。
抗議行動に参加したアルカイダの戦闘員はイエメン軍に向かって、
こう訴える。

「兵士たちよ、お前たちと戦いたくないことは、知っておいてほしい」
「お前たちとわれわれのあいだには問題などない。
問題はアメリカとそのエージェントだ。
アメリカにつくと危ないぞ」

オバマ政権はドローンによる「人間狩り」を公式には認めていない。
C I Aの元対策官は「ドローン攻撃はどれも処刑と同じです」と述べ、
こう言葉を続けている。

「死刑宣告を下すのであれば、公的な説明責任があるし、
この作戦全体について公の場での議論があってしかるべきです」

憎悪の連鎖は断てるのか。
本書は現代の黙示録である。
(早川書房、2376円)

著者は1974年、米国生まれ。
ニューヨーク・タイムズ記者。
2009年、ピュリツァー賞を共同受賞。

【評】 山岡淳一郎(ノンフィクション作家)

信濃毎日新聞 2016年5月1日

MLホームページ: http://www.freeml.com/uniting-peace

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