Global Ethics


by limitlesslife

IAEA=ICRP体制打破のために

みなさまへ   松元

12月中旬にIAEAが来日し、日本政府との共催で「原子力安全に関する福島閣
僚会議」という国際会議が福島で開催されます。これを機に日本全国 の原発再
稼動、原発輸出にゴーサインの「国際的お墨付き」を与えることは間違いなさそ
うです。

瓦礫、食品などで全国に放射性物質を拡散させ、誰一人責任者を処罰することも
なく加害の電力会社を税金で救済し、チェルノブイリ以上の棄民政策を 実行し
て いる日本政府の正当化の背後には、IAEA=ICRP体制がひかえていま
す。その根本的な考え方に科学的な異議をとなえているのが、ECRRで す。

【転送・転載歓迎】のお願い
みなさんがかかわっている反原発、脱原発の多くのブログに、下記の「市民版
ECRRの解説」を掲載していただき普及をすすめていただきたいと、お 願い
しま す。コピーして新たに貴ブログのリンク先に加えていただいても、下記の
リンク先でも、どちらでもかまいません。内容の趣旨から、Peace Philosophy
Centreの管理人様からも了解をえています。Facebookなどでも自由に拡散をお願
いします。
なお書物転載の場合は、矢ケ崎さんの意向もありますから、あらかじめご相談く
ださい。

松元保昭:y_matsu29@ybb.ne.jp

■市民版ECRR2010勧告の概要:配信にあたって
http://peacephilosophy.blogspot.ca/2012/04/ecrr2010.html

■市民版ECRR2010勧告の概要本文と解説前半(翻訳 松元保昭 解説・
監訳 矢ケ崎克馬)https://docs.google.com
/open?id=0B6kP2w038jEAcE5hZDNnTlp1NjA

■市民版ECRR2010勧告の概要本文と解説後半(翻訳 松元保昭 解説・
監訳 矢ケ崎克馬)https://docs.google.com
/open?id=0B6kP2w038jEAWE5IVEZwdVI3Zmc

■【知られざる核戦争】とは-国際原子力ムラの中心機関、ICRP批判の核
心! 【市民版 ECRRレスボス宣言2009 矢ケ崎克馬解説・監訳】
http://peacephilosophy.blogspot.ca/2012/08/2009_29.html

■ECRR2010勧告原文(英語)はこちらです。http://www.inaco.co.jp
/isaac/shiryo/pdf
/ECRR_2010_recommendations_of_the_european_committee_on_radiation_risk.pdf

===================
Palestine Solidarity in Sapporo
パレスチナ連帯・札幌 代表 松元保昭
〒004-0841  札幌市清田区清田1-3-3-19
TEL/FAX : 011-882-0705
E-Mail : y_matsu29@ybb.ne.jp
振込み口座:郵便振替 02700-8-75538
===================



by limitlesslife

【知られざる核戦争】とは-国際原子力ムラの中心機関、ICRP批判の核心!

みなさまへ   (BCCにて)松元

【拡散希望】(前回のものは差し替えてください)

先日(8月22日)配信しました「市民版ECRRレスボス宣言」が、Peace
Philosophyのブログに「【知られざる核戦争】とは-国際原子力ムラの中心機
関、ICRP批判の核心!」と題して掲載されました。

先に配信したものは、脱字や初歩的校正ミスなど数カ所の誤りがあり、もし転載
などされましたらご面倒でも、こちらに差し替えていただくようお願い 申し上
げます。

ブログ冒頭にあるように、「リンク先の転載転送はもちろん、内容も自由に転載
転送(ただしリンク先も表示)して普及していただきたいと思いま す。」

「市民版ECRRの解説」は、「勧告の概要」と「レスボス宣言」の2編で終わ
ります。この短い2つの文書が
国際原子力ムラの中心機関ICRPに対する、市民の側に立つ良心的科学者の
「宣戦布告」だからです。

日本では付帯決議とはいえ、本年6月に施行された「原子力規制委員会設置法」
には、「ICRPに加え、ECRRの基準についても十分検証し、これ を施策
に 活かすこと。」 と明記されました。3・11後の国民の行動力と知力によっ
て先進国の中でも例を見ない「国内法」にECRRリスク基準が登場したこと
は、国際的にも画期的 なことです。

しかし政府は、汚染食品、瓦礫処理などで放射能を全国に拡散し避難補償をしな
いばかりか、高汚染地域に人々を住まわせようとしています。子どもの 未来を
考えると、放射能リスクを市民自らが「学び、考え、行動する」時代となりました。

沖縄に在住し内部被曝の科学者である矢ケ崎克馬さんは、「主権の自覚は市民の
命と暮らしを守ります。私たち日本市民、学習し、自ら考え、行動し、 市民と
日本の主権を回復するために頑張りましょう。」と呼びかけています。これらの
「市民版ECRR解説」を、ぜひ普及させてください。

【転送・転載歓迎】

■【知られざる核戦争】とは-国際原子力ムラの中心機関、ICRP批判の核
心! 【市民版 ECRRレスボス宣言2009 矢ケ崎克馬解説・監訳】
http://peacephilosophy.blogspot.ca/2012/08/2009_29.html

■市民版ECRR2010勧告の概要:配信にあたって
http://peacephilosophy.blogspot.ca/2012/04/ecrr2010.html

■市民版ECRR2010勧告の概要本文と解説前半(翻訳 松元保昭 解説・
監訳 矢ケ崎克馬)https://docs.google.com
/open?id=0B6kP2w038jEAcE5hZDNnTlp1NjA

■市民版ECRR2010勧告の概要本文と解説後半(翻訳 松元保昭 解説・
監訳 矢ケ崎克馬)https://docs.google.com
/open?id=0B6kP2w038jEAWE5IVEZwdVI3Zmc

■ECRR2010勧告原文(英語)はこちらです。http://www.inaco.co.jp
/isaac/shiryo/pdf
/ECRR_2010_recommendations_of_the_european_committee_on_radiation_risk.pdf

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パレスチナ連帯・札幌 代表 松元保昭
〒004-0841  札幌市清田区清田1-3-3-19
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by limitlesslife

 【市民版ECRRレスボス宣言2009 矢ケ崎克馬解説・監訳】

みなさま へ   (BCCにて)松元

【市民版 ECRRレスボス宣言2009 矢ケ崎克馬解説・監訳】

はじめに

これは市 民が読みやすく自由に活用することを目的とした、「ECRR(欧州放射線リスク委員会)2010年勧告」の付属文書「レスボス宣言The Lesvos Declaration」(2009年)の翻 訳です。さきに公表した【市民版ECRR2010勧告の概要―矢ヶ崎克馬解説・監訳】の続編としてご利用いただけると幸いです。

ECRR2010年勧告の本文は、数か国語に及ぶ655件もの研究論文および国際文書が包括的に参照されたかなり専門的な内容で、日本語訳でも三百数十ページに及びます。 それらの結論的な主張が前回の「勧告の概要」(14項目、全8ページ)および今回の「レスボス宣言」(18項目、全4ページ)にまとめられているものです。これらの短い二つの文書では、(核兵器製造との密接な関連を指摘していないこ とを除けば)、原発推進を根拠づけている ICRPのリスク擁護理論に対峙する世界市民の立場に立ったECRRの基本的な主張が各国の行政担当者および市民がアクセスしやすいよう にもっとも簡潔明瞭に表現されています。とはいえ、 やはり素人にはむつかしい専門用語も使われていますので、内部被曝の科学者である矢ケ崎克馬さんの解説をいただきました。

矢ケ崎さ んは、現代は世界中の市民が国際原子力ムラに仕掛けられた「知られざる核戦争」に巻き込まれた時代であり、このレスボス宣言は、「(世界 市民による)国際原子力ムラに対する宣戦布告だ」と語っています。「市民の皆さんと一緒に…「科学に見せかけたウソ」を批判し、具体的で 誠実な科学を、市民のいのちと生活を守る実際の力になる懸け橋にしたい」という矢ケ崎さんが、今回とりわけ、この闘いでもっとも肝心な ICRP批判の核心を分かりやすく書き下ろしてくださいました。内部被曝研究者として調査や講演に奔走し、原爆症認定集団訴訟や福島集団 疎開裁判に市民と共にかかわっている矢ケ崎さんが、「日本政府はあまりにも無知で野蛮です」と語る言葉には重いものがあります。「今、100年先をにらんで、市民のいのちとくらしを守るために…市民が自ら学習する大運動を起こさなければなりません」と も語っています。前回の「勧告の概要」とあわせて、市民に寄り添い「誠実に科学する」日本の科学者による本格的な市民向け「ECRR の解説」であり、力強い市民への呼びかけでもあります。

核兵器を 存続管理し原子力産業を推進するIAEAおよびICRPを後ろ盾にし、人命と人権を意図的に無視し責任もとらずに棄民政策を実行して恥じ ない日本政府・官僚および 電力会社と関連大企業およびメディアの巨大な原子力ムラと対決していくために、そして国際的な連携、連帯が不可欠なこの長期の課題に立ち 向かうために、これら二つの文書の解説と翻訳が市民のたたかうちからの一助となることを願っています。普及をお願いいたします。

(2012年8月20日、 松元保昭記)

【訳者註 1】原文には質問と解説はありません。各項目の質問は松元が配し、解説を矢ヶ崎克馬さんが書き下ろしています。宣言本文翻訳上の不適切は 松元の責任です。

【訳者註 2】原文A~Iの分析事実、つづく1~9の行動要領は、Whereas(それゆえ)、assert(主張する)などの接続詞、動詞で各項目の論証が積み重なっている構成になっています。ここでは読み易さを目的とし ているため、項目ごとの文章として翻訳していることをお断りしておきます。

【訳者註 3】翻訳および解説文中の、ECRR(欧州放射線リスク委員会)、ICRP(国際放射線防護委員会)、IAEA(国際原子力機関)、 WHO(世界保健 機関)は、日本語名称を省略していることがあります。なお、国連科学委員会(UNSCEAR)は、「原子放射線の影響に関する国連科学委 員会」の略称です。

【訳者註 4】「レスボス宣言」の日本語訳は、すでに「安間武訳」(2011年4月)、「澤田昭二訳」(翻訳期日不詳)、「美浜の会ブログ:ECRR2010翻訳委員会訳」(2011年5月)、山内知也監訳『放射線被ばくによる健康影響とリスク評価―欧州放射線リスク委員会(ECRR)2010年勧告』(明石書店刊、2011年11月)があります。

■ECRR2010勧告および付属文書英語原文サイト

http://www.inaco.co.jp/isaac/shiryo/pdf/ECRR_2010_recommendations_of_the_european_committee_on_radiation_risk.pdf

 

 

レスボス宣言

2009年5月6日

ギリシャのレスボス島モリボスにて

矢ケ崎克馬解説・監訳 松元保昭訳

 

質問①、前回は「ECRR2010年勧 告の概要」について解説していただきましたが、はじめに、「ECRR2003年勧 告」と「ECRR2010年勧 告」のあいだにある、この「2009年レ スボス宣言」の意義について教えていただけますか?

矢ケ崎:ECRRの設立に際して、①放射線リスクの全体に対して正しく評価する、②放射線被曝がもたらす損害について最良の科学予測 モデルを開発する、③政策的勧告の基礎となる倫理および哲学を確立する、④公衆と環境に対する放射線防護のリスクと損害のモデルを示す、 等を検討課題としています。これらの実践的必要性とともに、チェルノブイリ事故被害の解明などにより証明されることが2009年までに相当数多くありました。ECRRが2003年に勧告を発表すると世界的に大きな反響を得るところとなりましたが、政策的に採用されるところまでには至っていま せんでした。他方、高線量外部被曝をリスクモデルにするICRPが検討を回避している細胞レベルへの放射線影響は、分子生物学の発展と共にリスクの検討状況を一変させてきました。 その間に、ICRPや国連科学委員会が無視続けているチェルノブイリの犠牲が、非常にはっきり解明されてきました。また、劣化ウラン弾 に対するリスクの解明も進展しました。さかのぼって、大気圏内核実験の健康影響については、ICRPはまった く否定していますが、その放射性降下物による内部被曝が、現在蔓延しているがんの原初的原因であることが明らかにされてきました。ICRPのリスクモデルが破綻していることは、ますます明白になってきたのです。レスボス宣言は、以上のことを確認しつつ、 各国政府がICRPのリスクモデルを破棄し、ECRRモデルを採用することを主張しています。レスボス宣言はこの政策的訴えを特徴としています。

 

A,国際放射線防護委員会(ICRP)は、電離放射線被曝にかんする特定のリス ク係数を普及させた。

B,ICRP のリスク係数は、放射性廃棄物や核兵器、および汚染土壌や汚染物質処理、天然起源の放射性物質と人為的に放出された人工放射性物質 (NORMおよび TENORM)、原子力発電所や核燃料サイクルでの全段階、さらに賠償と復興事業などについて、作業従事者や公衆への被曝にかんする放射線防護法とその基 準を普及する目的で、連邦および国家体制によって幅広く採用されている。

 

質問②、「ECRR2010年勧 告」では「ICRPリスクモデルの欠陥」が詳細に述べられていますが、まず、ICRPリス クモデルの特徴について説明していただけますか?

矢ヶ崎: 科学の手段に対する国家的・大資本的支配の不幸な結果として―ICRPリスクモデルの基盤にある放射線科学の在り方がまず問われています。自然科学一般は、科学といえば真理を探 究することです。「人間の意識とは独立に在る客観的存在を、如何に正確に人間の意識に反映させるか」が、科学本来の目的です。法則を知っ て法則に従うことによって自由が獲得できる(原理が応用できる)のです。人類は科学によって自由を得てきたと言えます。科学を行うにも、 原理を応用するにも、方法としての手段が、科学の発展につれて高度に複雑に進展してきました。困ったことには、資本主義の発展につれて、 方法としての手段が国家や大企業等によって独占されるようになり、手段を独占するがゆえに科学もその結果としての応用も、恣意的に支配 (コントロール)されるようになりました。

コント ロールは、カネと体制支配により進みます。ここに、軍事国家や大資本の手が伸び、科学技術が独占的に支配され、科学が発展すればするほ ど、殺戮の手段が激烈となり、環境が破壊されるという不幸な軍事主義・資本主義の支配結果を招くことになりました。その典型的な例は、原 爆製造プロジェクト「マンハッタン計画」 と、その後の放射線による犠牲者隠しです。前者はアメリカにより極秘裏に進められた国家プロジェクトであり、後者は日本占領下の米軍によ り日本政府の協力下に進められたABCC―放影研によるデータ操作と、それに続く米国支配下の世界の原子力ムラ=ICRPによる「科学支配」なのです。

一方では 原水禁運動として核兵器廃絶の必要認識が進展している半面、放射線科学・工学分野の不当支配に対する排除運動は極めて遅れをとっていま す。今まさに必要であるフクシマの市民の被曝防止の施策が進まず、原発稼働が再開され安全神話が再強行されようとしています。科学とその 応用の手段に対する恣意的な寡頭支配を排除するには、1954年に当時の日本学術会議が「原子力三原則」として示した、「公開・民主・自主」を、科学全般に対して原理的に貫くし かありません。この全世界を支配するICRP 国際原子力ムラの支配に終止符を打つために、ECRRが活動を始めました。わが国でも原爆症認定集団訴訟がたたかわれ、隠されてきた内部被曝の告発が広がってきました。

レスボス 宣言は「知られざる核戦争(圧倒的なICRP下に進められている放射線犠牲者隠し)」に対する宣戦布告に当たります。破壊されつつある環境を守るのは科学しかな い―核支配を続けるには原子力ムラしかありえない―この不幸な対立の過程で核推進勢力は科学を拒んできました。歴史的には、国際的原子力 ムラが形成されて、被曝の科学が歪められてきました。

放射線 はいのちと環境を傷付けます。いのちと環境に対する放射線の影響をありのままに見て、きちんと科学することがいのちと環境を守る手段で す。それに対し、放射線をまき散らす核兵器開発と原発にとっては、放射線の犠牲者がどれだけいるか?多数か少数か?という現状を明らかにされることが核戦略や原発会社の存続に関わる重大な障壁になります。これらの勢力は科学をきち んとすることを恐れます。核兵器と原発を進める社会的世俗的権力が、放射線防護学を研究費と人事支配により、放射線防護学等の「科学的」 分野を完璧に政治支配してしまいました。内部被曝研究が阻止されてきました。それが「安全神話」の母体であり、その支配体制は原子力ムラ です。

「安全神 話」はICRPに現れ、ICRPの考え方に依拠して実施体制をとるのが世界の原子力ムラ:IAEA, WHO, 国連科学委員会、核保有国と軍事同盟を結ぶ関連諸国政府なのです。内部被曝はヒロシマ・ナガサキの原爆被害から隠し 続けられました。原爆投下後占領国アメリカは核兵器を残虐兵器と見られないために、枕崎台風を利用して放射能の埃は無かったことにしまし た。すなわち内部被曝は無かったという「科学的粉飾」を行わせ、ABCCや放影研にデータ粉飾が深められて、それがICRPに引き継がれました。

では、 ICRPの毒牙とはどんなものでしょうか?
ICRPの特徴は、第一に【放射線起因疾病の定義】。分子生物学の発展などを無視し続けて、放射線の作用を、ブラックボックスに閉じ込 め、研究対象とすることを阻みました。放射線の作用をブラックボックスに閉じ込めることによって、何ができたかというと、放射線の人体被 害は「がん、白血病、その他ホンの2~3の疾病」に限定したことです。放射線の被害は全身に渡り、あらゆる傷害に現れる可能性があるので すが、彼らが限定した疾病以外は放射線が起因ではなく、「放射能恐怖症」等が傷害を生み出すとしたことです。これにより非常に多数の被曝 被害者を排除し隠ぺいすることに成功したのです。

第2に【吸収線量評価】。吸収線量の評価方法を臓器当たりに放射線によって持ちこまれたエネルギーとして計算することで す。この手法は、内部被曝の局所的な、継続した被曝を平均化単純化して、実際の被曝領域内の大きな被曝密度を、数値的に極端に過小評価を 行うことです。臓器ごとの平均化単純化は、被曝の具体性を一切捨て去り、被曝状況をブラックボックスに閉じ込めてきたと表現しても良いで しょう。これにより内部被曝を検知する「科学の目」を被曝の科学から奪い去りました。

第3は【低線量域のリスク評価】。上に述べたように内部被曝を科学操作によって無いものとしたうえに、被曝の具体性を捨 象することを基礎として、内部被曝と外部被曝的低線量領域のリスク評価を、原爆の大線量直接被曝領域からの直線外挿に依ったことです。ペ トカウ効果、バイスタンダー効果、間接効果等々の内部被曝の具体的現象を考慮すれば歴然とした誤りです。加えて、「100mSv以下の放射線起因の疾病のデータは無い」という彼らの隠ぺいの結果を被害の事実に置き換えるキャンペーンを 張っています。チェルノブイリ後の甲状腺がんの発生そのものだけを取り上げても、ICRPは被害の予測そのものが全くできず、何ケタも被害を過小評価していることが証明されました。吸収線量の評価とリスク 係数の評価の両者が何ケタもの過小評価をもたらすものなのです。

第4は【功利主義】。公益を得るためには犠牲もやむをえない、という功利主義です。これは日本国憲法の根底にある「個人 の尊厳」を真っ向から否定するものです。犠牲になるのは一人一人の人体と人格であり、尊厳されるべき「個」なのです。その「個」の犠牲を 隠すために平均化したリスクを掲げて、公益の名のもとに功利主義の受容を強制しているのです。

第5は【支配体制】。IAEA,WHO, UNSCER(原子放射線の影響に関する国連科学委員会)、核 保有国と軍事同盟を結ぶ関連諸国政府等によるICRPを維持し強制する機構の全面的支配ぶりです。日本においても医学、保健学、原子力工 学、等のあらゆる教育課程の基礎にICRPがあり、関連する専門家がICRPで教育され、研究もICRPで展開されます。国際的原子力ム ラが完成しているのです。私はこれらが行ってきた犠牲者隠しを、「知られざる核戦争」と呼んでいます。知られざるとは、あまりにも圧倒的 で誰でも平気で使っているので気が付かれ難い、核戦争とは科学上の粉飾により犠牲者を隠すという核戦略による戦争です。

こうした 特徴を持つのがICRPなのですが、内部被曝を含めて被曝を具体的に科学させていない手法は、具体性を捨象した平均化・単純化の方法で す。ICRPのブラックボックスを科学に解放するときに、客観的に正確な被曝防護が、個の尊厳に基づいて、実施できるところとな ります。要は具体的で誠実な科学を実践することです。ICRPによる被害者隠しとそれを許している被曝の学問の歪みは、もはや一刻も猶予 なりません。

ECRRの研究と勧告は、ICRPが多面的に張り巡らせたブラックボックスの中身を科学的に解放しようとしていると言えま す。体内に入った放射性原子の崩壊過程を解析し、それに伴うリスク評価をしています。微粒子で入る条件で、時間的に継続した被曝の危険、 局所被曝をもたらす危険、重い放射性元素の特殊な危険、時間経過とともにDNA修復過程に関係する危険、等々、あらゆる被曝の具体性を明 らかにしリスク評価をしています。帰納法的手法により、現場の事実を大事にし、具体的な被曝とリスクを直結させようとします。これによ り、演繹的に設定された、ICRPの、教条による定義から出発して「現実を切り捨ててきた」非科学の方法に、終止符を打とうとしているの です。

ECRRが2003年 勧告で示した被曝の世界観は、客観的被曝状況が明らかにされてくる中でますます重要であることが証明されてきました。ECRRは被曝被害を予想でき、ゆえ に犠牲者を生まないで市民を防護できる力を確認できてきたのです。レスボス宣言は、一刻も早く、ICRPの犠牲者隠しの哲学によってもた らされている放射線の犠牲者排出を停止させたいと願って、出されたというべきです。これに対し、日本で危惧される現実は、「原子力ムラ」 に反対するような科学者間でも、ECRRの具体的学習が進んでおらず、ECRRに部分的欠陥を発見したといっては、全面否定に発展させる傾向が強いことで す。やはり、放射線科学分野の歴史的に陥っている「科学としての欠陥」を、自覚的に率直に見るべきだと思います。

C,チェルノブイリ事故によって、被曝後における核分裂生成物がもたらす深刻な 健康障害の発症の確認という非常に重要な機会が与えられ、とりわけ胎児および幼児の放射線被曝に適用するには、現在のICRPリスクモデ ルでは欠陥があることが証明された。

 

質問③、ECRR2010年勧告の前年のこの段階では、どのようなことが「証明された」のでしょうか?

矢ケ崎: チェルノブイリ原発事故の放射線影響が多様に解明されてきました。それらをICRPや国連科学委員会は、放射線の影響とはせずに「放射線恐怖症」によると処理し続けてきましたが、母親の胎内の生命や 白血病の小児や土手ネズミやシジミ蝶などの生命体が「放射線恐怖症」で被害を受けるはずがありません。スイスやスェーデン北部の白血病と セシウム汚染の解明から、ICRPモデルが600倍ものリスクを過小評価していることが実証されました。また、ドイツ国内原発の5km以内において小児白血病が有意な増加を示していて、放射線との因果関係が証明されました。また、チェルノブイリ原発 事故当時、母親の胎内にいた小児に43%もの小児白血病の増加があることが確認されました。さらに劣化ウラン弾の影響や、大気圏内核実験の発がん影響につい ても解明が進みました。特徴的なことは、ICRPの無視している低線量領域とくに内部被曝では、ICRPリスクモデルに100倍から1000倍の誤りがあることがはっきり認められたのです。

D,ICRPリスクモデルは、原子力事故後の被曝、また内部被曝をもたらす体内 の放射性物質にたいして正当に適用されることは出来ないと、満場一致で判断する。

E,ICRPリスクモデルは、DNAの構造が発見される以前に、また放射線核種 がDNAに化学的な親和性があるという発見以前に開発されたものであるため、ICRPが採用する吸収線量という概念では、これら放射線核 種による被曝影響を十分に説明することは出来ない。

F,ICRPは、放射線リスクおよびとくに結果として生じる多様な疾病領域の理 解にかんして、ゲノム不安定性やバイスタンダード効果のような非標的効果、もしくは二次的効果の発見を考慮していない。

 

質問④、上記EFでは、「ICRPリスクモデル」が近年の科学的発見を明らかに無視していると述べられていますが、こういう指摘に対してICRPおよ びそれを支持する科学者たちはどのような反応をしているのですか?あわせて、「化学的親和性」、「ゲノム不安定性」、「バイスタン ダード効果」、「非標的効果」、「二次的効果」などの簡単な説明もお願いしたいのですが?

矢ケ崎:ICRPは2007年勧告においても、細胞レベルでの放射線影響のリスク評価に、実態的には何の対応もしていません。彼らが「低線量」 と称する実際は、内部被曝の吸収線量評価については相変わらずに固執しています。吸収線量の定義として微分方程式を使用し、一見微視的見 地に立っているように見せかけていますが、実際は「臓器ごとの平均」を執っており、微視的観点は見せかけのもので、内部被曝は事実上完全 に放棄しています。ICRPは組織としては最近の科学的解明に対して何の対応もしてはいませんが、元ICRP幹部が、興味あふれる見解を表明しています。1990年と2007年のICRP勧告の編集者であったJ.バレンタイン博士は次のように述べています。「ICRPのリスクモデルは人類の被曝による健康影響を予測するためにも、説明するためにも、採用することはできない」、「そ れは内部被曝についての不確かさがあまりにも大きいからである。」(ECRRとの公開討論会:2009年4月21日、於ストックホルム)。

 

《用語解 説》

【化学的 親和性】:複数の原子で原子の種類が異なっても化学的性質が似ていることにより同じように化合物などを形成しやすい性質を言う。例えば、 ストロンチウムがカルシウムと間違えられて骨に沈着すること:白血病の増加等。あるいはウラニルイオンがカルシウムイオンと親和性がある ためにDNA中のリン酸塩に結合する等:各種固形がん、白血病、先天性形成異常などが、劣化ウラン弾が投下されたイラク等に多発 している。

【ゲノム 不安定性】:分子が切断されて修復 される際に異常遺伝子が生じ、塩基配列の不安定性がもたらされる場合と、染色体の構造,数が不安定化する場合がある。

【バイス タンダー効果】:直接電離放射線に打たれた細胞だけでなく、その周りの細胞にも染色体異常等の影響が現れる現象。細胞間のシグナル伝達機 構が重要な役割を果たしている。ICRPでは、「アルファ線に打たれれば、その細胞は死滅するから遺伝子の異常変成等の危険は少ない」などと論じられてきた が、バイスタンダー効果はその考え方は事実と違うことを明らかにした。

【非標的 効果】:直接照射を受けていない細胞 において,直接照射を受けた細胞でみられるのと同様の放射線影響が誘導される現象。水の電離を媒介としてDNA異常がもたらされる間接効果 あるいはペトカウ効果、等々が含まれる。線量との関わりは、高線量の時は放射線の電離作 用により活性酸素が多量に発生するが、活性酸素同士で互いに結合してしまい、活性酸素が細胞膜やDNAを傷つける確率は少ないのに 対し、少線量の時は発生した活性酸素が細胞膜やDNAを傷つける確率が増大する。

【二次的 効果】:放射線によって電離した電子がさらに他の原子の電離を行うなどの効果。

G,放射線被曝による非がん性疾患の影響によって死因が混同されてしまうため、 被曝によって生じたがん疾患のレベルを正確に測定することはおそらく不可能である。

 

質問⑤、後段の3でも指摘されていますが、「放射線被曝による非がん性疾患」とは、現在、どのような疾患があげ られているのですか?どうして、がん以外の疾患につながるのですか?

 矢ケ崎:ICRPは放射線の原理的作用も、分子生物学的実態研究も具体的には取り入れずに放射線の作用をブラック ボックスに閉じ込めてきました。それにより、放射線の害悪をごく一部分に「教条的に」閉じ込めることができてきたのです。実際には様々な 放射線の害悪が現れます。非がん性疾患は、例えば、免疫力機能低下、老化、全般的健康損害(被爆者ではぶらぶら病が知られている)、乳児 死亡、死産、生殖系疾患、心臓病、中枢神経系、精神的疾患等々あらゆる疾患を含みます。それは放射線の基本作用が電離であり、DNAだけでなく生命機構を維持する多様な組織の分子を切断し、切断された組織が完全に正常再結合することはあり得ないこ とから生じます。バンダジェフスキーのベラルーシ市民の臓器解剖結果からは、あらゆる臓器にセシウム137が運ばれていることが解明されていますが、体中のあらゆる組織に於いて分子切断がなされることにより、多様な健康被 害がもたらされることは容易に推察できることです。

H,ICRPは、その報告書の位置付けを単なる助言と見なしている。



by limitlesslife

国内法にはじめて、ECRRリスク基準の検証および施策に活かすことが義務付けられる

みなさまへ    (BCCにて)松元この6月に制定された「原子力規制委員会設置法」の「付帯決議」に、
「ICRPに加え、ECRRの基準についても十分検証し、これを施策に活かす
こと。」 と明記されていました。付帯決議とはいえ、国内法においてECRR
リスク基準を参照し検証することが義務付けられたことは画期的なことと言えま
す。

もとよりこの「原子力規制委員会設置法」の目的は、「国際的な基準を踏まえて
原子力利用における安全の確保を図るため」に「設置」されたもので、 今回の
不 適格人事のように「規制」というより根底は原子力利用の「推進機関」の一
部と考えた方がよさそうです。加えてすでに指摘されているように、「我が 国
の安全 保障に資することを目的とする」とはっきり書かれているように、核兵
器製造の潜在能力を保持するための、プルトニウムや劣化ウラン等を生み出す核
燃料サイ クル自体の維持存続をねらいとしていることは間違いありません。

周知のように「世界平和アピール七人委員会」は、「実質的な軍事利用に道を開
く可能性は否定できない」「国益を損ない、禍根を残す」とする緊急ア ピール
を発表しましたが、拙速なかたちで法案は議会を通過してしまいました。

「付帯決議:十一」では、「我が国の非核三原則はもとより核不拡散についての
原則を覆すものではない」などと「弁明」していますが、プルトニウム の備蓄
に関しては口を閉ざしたままです。

「付帯決議」28項目とあわせて全体を読むと、いかにも拙速に張り付けられた
パッチワークのような感がしますが、それでも「ECRR基準を十分検 証し、
こ れを施策に活かすこと」と、法文に明記されたことの意義は大きいと思いま
す。今後の市民の闘いの突破口にしなければなりません。

■付帯決議:十四、放射線の健康影響に関する国際基準については、
ICRP(国際放射線防護委員会)に加え、ECRR(欧州放射線リスク委員
会) の基準に ついても十分検証し、これを施策に活かすこと。また、これらの
知見を活かして、住民参加のリスクコミュニケーション等の取組を検討すること。

●原子力規制委員会設置法・付帯決議
http://www.sangiin.go.jp/japanese/gianjoho/ketsugi/current/f073_062001.pdf

===================
Palestine Solidarity in Sapporo
パレスチナ連帯・札幌 代表 松元保昭
〒004-0841  札幌市清田区清田1-3-3-19
TEL/FAX : 011-882-0705
E-Mail : y_matsu29@ybb.ne.jp
振込み口座:郵便振替 02700-8-75538
===================



【市民版ECRR2010勧告の概要―矢ヶ崎克馬解説・監訳】(その2) [1/3] by limitlesslife

[uniting-peace][20315] 【市民版ECRR2010勧告の概要―矢ヶ崎克馬解説・監訳】(その2) [1/3]

みなさまへ    (BCCにて)松元

転送転載歓迎

【市民版ECRR2010勧告の概要―矢ヶ崎克馬解説・監訳】(その2)

矢ヶ崎克馬解説・監訳(松元保昭訳)

【註1】これは市民が読みやすく自由に活用することを目的とした、「ECRR(欧州放射線リスク委員会)2010年勧告」に加えられた「理事会概要Executive Summary」(勧告の概要)の翻訳です。矢ヶ崎克馬さんの監修と解説によってかなり理解しやすくなったと思いますが、不適切な翻訳があれば松元の責任であることをお断りしておきます。

■ECRR2010勧告英語原文サイト

http://www.inaco.co.jp/isaac/shiryo/pdf/ECRR_2010_recommendations_of_the_european_committee_on_radiation_risk.pdf

※【註2】原文には質問と解説はありません。各項目の質問は松元が配し、その解説は矢ヶ崎克馬さんが執筆しています。また、勧告本文にあるいくつかのカッコ内註の用語説明も、矢ヶ崎さんのものです。註のないカッコ内は、原文のものです。

 

9、本委員会は、類似した被曝から被曝リスクが明確にされるという考えに基づき、疾病に結びつく放射線被曝の証拠を再検討する。したがって本委員会は、原爆の調査研究にはじまり、核実験の死の灰による被曝にいたるまで、核および原子力施設の風下住民、核および原子力施設従事者、再処理工場、自然バックグランド研究、核および原子力事故などに起因する被曝と健康障害に関連する報告書のすべてを検討する。本委員会は、低線量の体内放射線照射に起因する傷害の明白な証拠を示す被曝研究の最近の二つの傾向にとりわけ注目している。

 

これらは、チェルノブイリ以降の小児白血病にかんする諸研究、およびチェルノブイリ以降に現れているDNA突然変異ミニサテライトが増加していることの観察記録である。これら双方の研究によって、ICRPリスクモデルには100倍から1000倍の係数誤差があることが立証されている。本委員会は、健康影響を評価できるようあらゆる被曝タイプに適用可能なモデルの中に放射線量の算定荷重を設定するため、内部および外部放射線に起因する被曝リスクの証拠を採用する。ICRPとは異なり本委員会では、致死性がんから幼児死亡率にいたるまで、また特定されていない一般的な健康被害を含めた健康障害のその他の原因にまで分析対象を広げる。

 

 

質問⑬:係数の誤差に「100倍から1000倍」もあると書いていますが、そういう評価ミスはどういう結果を招くことになるのですか?またこうした指摘を受けて、ICRPでは何か返答したり修正したりしたのですか?

矢ヶ崎:原発推進のためには、現実に現れている健康被害・疾病を隠すことが必要であり、この過小評価は、原発推進と核兵器開発に大きく貢献してきました。
前述のように、リスク判定の構成概念は2つあり、①実効線量をどのように算出するか、②単位実効線量(1Sv)当たりに現れる犠牲者数(リスク係数)をどのように与えるか、です。

ICRPは、吸収線量の定義を臓器当たりとすることで実効線量を小さく算出し、放射線が原因で現れる疾病を限定することと、犠牲者を隠ぺいすることによりリスク係数を低くすることの両者を行い、極端にリスクを過小評価してきました。
例えば、ベータ線は体内では1センチメートルほどしか飛びません。この小さい領域に、集中した被曝がもたらされます。このホットパーティクル内で被曝の実効線量を評価すると、ICRP式で計算した値の100倍から1000倍になるのです。
歴史的に、ICRPが行ってきた実践は、あらゆる放射線被害の犠牲者を公式記録に載せないようにすることと、内部被曝を研究させないように科学上の専制支配を行うことによってきました。そのひとつの現れは「原子力村」なのです。
これらの「科学」操作上の目的意識は、核抑止力と原発を維持するための現実的力にコントロールされ、また、それを支てきました。
誤りが指摘されるとますます、現実利益を守ろうとする力が働きます。隠ぺいあるいは無視することと、被曝の学問を歪める専制支配を強めてきました。福島でも日本政府とそれを支えるICRP論者によりその実施体制は強化されているように見えます。
ECRRの指摘は、ICRPに関係する学会でまともに議論されるのではありません。笑い飛ばしたり、無視することにより、本質的議論を回避しているのが実情です。また、2007年ICRP勧告での吸収線量の定義などは、一見ECRRの指摘にこたえているように見せかけていますが、本質は全く変わらないのです。「粉飾して維持する」ことを行っているのです。

 

 

10、本委員会は、現在多発しているがんは、1959年から1963年にかけて地球上で行なわれた大気圏核実験による放射性降下物の結果であり、さらに近年核燃料サイクルの操業から環境中に放出されている放射性核種は、がんおよび他の形態の健康障害にも著しい増加を招くだろうと結論をくだす。

 

 

質問⑭:今回のような事故は別にして、普段稼動している原発には放射能汚染の心配はない、というのがいままでの政府や電力会社の説明でしたが?

矢ヶ崎:電力会社や政府は、内部被曝を無視することによって、放射能漏れがあっても「規定された値以下に希釈されているから害はありません」と言い続けて原発を運転し、被害を無視し続けてきました。しかし、グールドらによる、「アメリカの原発周囲100マイルの住民に現れた女性乳がん死亡者の増加」を明らかにした典型的研究などは、明確に原発の日常的放射能漏れの被害を示しています。このほかにも続々と日常的な被害が明らかにされています。核再処理施設セラフィールドの被害はECRRが指摘しているとおりなのです。しかし、政府や電力会社はやすやすと便益を譲り渡すことは致しません。

 

 

11、ECRRの新しいモデルとICRPのモデルの双方を使って、1945年以降の核および原子力プロジェクトの結果による全死亡者数を計算した。国連が発表した1989年までの全住民にたいする被曝線量の数値を基礎にしたICRPの計算では、がん死亡者数は117万3600人となる。ところが本委員会のモデルで計算すると、がんによる死亡者が6160万人、子ども160万人、胎児190万人の死亡者数という予測結果となる。さらにECRRでは、地球上の大気圏核実験による放射性降下物の期間に被曝した人々のあらゆる疾病と諸条件を総計すると、生活の質(註:生活の質とは、どれだけ人間らしい生活や自分らしい生活を送り人生に幸福を見出しているか)の10パーセントが失われていると予測している。

 

 

質問⑮:これは驚きですね。もしこれが本当だとしたら、がんの原因の相当多くが核兵器や原発の影響ということになりますが、矢ヶ崎先生はどう思われますか?

矢ヶ崎:がんの原因には放射線が大きな要素を占めると思います。

東北大学の瀬木三雄医師のデータをスターングラスがグラフ化した、日本の小児がんの死亡率は、戦前はほぼ一定であったのが、原爆投下と大気圏内核実験の終了する禁止条約(1963年)の5年後、1968年には、戦前の7倍に増加しています。内部被曝で放射性微粒子を体内に取り入れている場合は、たった1個の放射性微粒子でも、線量当たりの発がんの危険性は減少しないことを考慮すると、現在のがん発生の多くは放射線が関与していることを認めざるを得ません。現代社会が多くの要因で多くのがんを多発させ、犠牲者もたくさん出していますが、その基盤に放射線がバックグランドを引き上げ、他の発がん要因と相乗的に重なって被害を増加させているのです。放射線の害は他の因子との相乗作用と免疫力の低下です。

 

12本委員会は、自然バックグラウンドの電磁放射線とそれが生成する光電子により、放射線吸収が増強されるということをつうじて、体内にある高い原子番号の諸元素が放射線リスクを増強する(註:自然バックグラウンドの電磁放射線が、体内吸収されている高い原子番号の諸元素に当たると、光電子効果によって新たに電子が放出されて、放射線リスクが増強される)ことを論証する新しい研究に注目している。本委員会は、この効果こそウラン元素の被曝から生じる健康被害の主要な原因であることを確認して、このような被曝にたいする荷重係数を作り上げた。本委員会は、ウラン降下物によって被曝した住民にたいするウラン兵器の影響を検討し、ウラン被曝後に観察された異常な健康被害は、このようなプロセスによってメカニズムが説明されると強調しておく。

 

 

質問⑯:ここはウラン兵器の問題だと思いますが、アメリカ政府も日本や各国政府もまだウラン兵器の人体に対する影響を認めていませんね。湾岸戦争やボスニアやコソボ、そしてイラク戦争でも使われ、さまざまな奇形児が生まれていると聞いていますが?

矢ヶ崎:劣化ウラン弾はウラニウム238を使用することに寄ります。核分裂をもたらすものではなく、ウランの質量の大きいことを利用して戦車に穴をあけて破壊するための砲弾です

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【註1】これは市民が読みやすく自由に活用することを目的とした、「ECRR(欧州放射線リスク委員会)2010年勧告」に加えられた「理事会概要Executive Summary」(勧告の概要)の翻訳です。矢ヶ崎克馬さんの監修と解説によってかなり理解しやすくなったと思いますが、不適切な翻訳があれば松元の責任であることをお断りしておきます。

■ECRR2010勧告英語原文サイト

http://www.inaco.co.jp/isaac/shiryo/pdf/ECRR_2010_recommendations_of_the_european_committee_on_radiation_risk.pdf

※【註2】原文には質問と解説はありません。各項目の質問は松元が配し、その解説は矢ヶ崎克馬さんが執筆しています。また、勧告本文にあるいくつかのカッコ内註の用語説明も、矢ヶ崎さんのものです。註のないカッコ内は、原文のものです。

 

9、本委員会は、類似した被曝から被曝リスクが明確にされるという考えに基づき、疾病に結びつく放射線被曝の証拠を再検討する。したがって本委員会は、原爆の調査研究にはじまり、核実験の死の灰による被曝にいたるまで、核および原子力施設の風下住民、核および原子力施設従事者、再処理工場、自然バックグランド研究、核および原子力事故などに起因する被曝と健康障害に関連する報告書のすべてを検討する。本委員会は、低線量の体内放射線照射に起因する傷害の明白な証拠を示す被曝研究の最近の二つの傾向にとりわけ注目している。

 

これらは、チェルノブイリ以降の小児白血病にかんする諸研究、およびチェルノブイリ以降に現れているDNA突然変異ミニサテライトが増加していることの観察記録である。これら双方の研究によって、ICRPリスクモデルには100倍から1000倍の係数誤差があることが立証されている。本委員会は、健康影響を評価できるようあらゆる被曝タイプに適用可能なモデルの中に放射線量の算定荷重を設定するため、内部および外部放射線に起因する被曝リスクの証拠を採用する。ICRPとは異なり本委員会では、致死性がんから幼児死亡率にいたるまで、また特定されていない一般的な健康被害を含めた健康障害のその他の原因にまで分析対象を広げる。

 

 

質問⑬:係数の誤差に「100倍から1000倍」もあると書いていますが、そういう評価ミスはどういう結果を招くことになるのですか?またこうした指摘を受けて、ICRPでは何か返答したり修正したりしたのですか?

矢ヶ崎:原発推進のためには、現実に現れている健康被害・疾病を隠すことが必要であり、この過小評価は、原発推進と核兵器開発に大きく貢献してきました。
前述のように、リスク判定の構成概念は2つあり、①実効線量をどのように算出するか、②単位実効線量(1Sv)当たりに現れる犠牲者数(リスク係数)をどのように与えるか、です。

ICRPは、吸収線量の定義を臓器当たりとすることで実効線量を小さく算出し、放射線が原因で現れる疾病を限定することと、犠牲者を隠ぺいすることによりリスク係数を低くすることの両者を行い、極端にリスクを過小評価してきました。
例えば、ベータ線は体内では1センチメートルほどしか飛びません。この小さい領域に、集中した被曝がもたらされます。このホットパーティクル内で被曝の実効線量を評価すると、ICRP式で計算した値の100倍から1000倍になるのです。
歴史的に、ICRPが行ってきた実践は、あらゆる放射線被害の犠牲者を公式記録に載せないようにすることと、内部被曝を研究させないように科学上の専制支配を行うことによってきました。そのひとつの現れは「原子力村」なのです。
これらの「科学」操作上の目的意識は、核抑止力と原発を維持するための現実的力にコントロールされ、また、それを支てきました。
誤りが指摘されるとますます、現実利益を守ろうとする力が働きます。隠ぺいあるいは無視することと、被曝の学問を歪める専制支配を強めてきました。福島でも日本政府とそれを支えるICRP論者によりその実施体制は強化されているように見えます。
ECRRの指摘は、ICRPに関係する学会でまともに議論されるのではありません。笑い飛ばしたり、無視することにより、本質的議論を回避しているのが実情です。また、2007年ICRP勧告での吸収線量の定義などは、一見ECRRの指摘にこたえているように見せかけていますが、本質は全く変わらないのです。「粉飾して維持する」ことを行っているのです。

 

 

10、本委員会は、現在多発しているがんは、1959年から1963年にかけて地球上で行なわれた大気圏核実験による放射性降下物の結果であり、さらに近年核燃料サイクルの操業から環境中に放出されている放射性核種は、がんおよび他の形態の健康障害にも著しい増加を招くだろうと結論をくだす。

 

 

質問⑭:今回のような事故は別にして、普段稼動している原発には放射能汚染の心配はない、というのがいままでの政府や電力会社の説明でしたが?

矢ヶ崎:電力会社や政府は、内部被曝を無視することによって、放射能漏れがあっても「規定された値以下に希釈されているから害はありません」と言い続けて原発を運転し、被害を無視し続けてきました。しかし、グールドらによる、「アメリカの原発周囲100マイルの住民に現れた女性乳がん死亡者の増加」を明らかにした典型的研究などは、明確に原発の日常的放射能漏れの被害を示しています。このほかにも続々と日常的な被害が明らかにされています。核再処理施設セラフィールドの被害はECRRが指摘しているとおりなのです。しかし、政府や電力会社はやすやすと便益を譲り渡すことは致しません。

 

 

11、ECRRの新しいモデルとICRPのモデルの双方を使って、1945年以降の核および原子力プロジェクトの結果による全死亡者数を計算した。国連が発表した1989年までの全住民にたいする被曝線量の数値を基礎にしたICRPの計算では、がん死亡者数は117万3600人となる。ところが本委員会のモデルで計算すると、がんによる死亡者が6160万人、子ども160万人、胎児190万人の死亡者数という予測結果となる。さらにECRRでは、地球上の大気圏核実験による放射性降下物の期間に被曝した人々のあらゆる疾病と諸条件を総計すると、生活の質(註:生活の質とは、どれだけ人間らしい生活や自分らしい生活を送り人生に幸福を見出しているか)の10パーセントが失われていると予測している。

 

 

質問⑮:これは驚きですね。もしこれが本当だとしたら、がんの原因の相当多くが核兵器や原発の影響ということになりますが、矢ヶ崎先生はどう思われますか?

矢ヶ崎:がんの原因には放射線が大きな要素を占めると思います。

東北大学の瀬木三雄医師のデータをスターングラスがグラフ化した、日本の小児がんの死亡率は、戦前はほぼ一定であったのが、原爆投下と大気圏内核実験の終了する禁止条約(1963年)の5年後、1968年には、戦前の7倍に増加しています。内部被曝で放射性微粒子を体内に取り入れている場合は、たった1個の放射性微粒子でも、線量当たりの発がんの危険性は減少しないことを考慮すると、現在のがん発生の多くは放射線が関与していることを認めざるを得ません。現代社会が多くの要因で多くのがんを多発させ、犠牲者もたくさん出していますが、その基盤に放射線がバックグランドを引き上げ、他の発がん要因と相乗的に重なって被害を増加させているのです。放射線の害は他の因子との相乗作用と免疫力の低下です。

 

12本委員会は、自然バックグラウンドの電磁放射線とそれが生成する光電子により、放射線吸収が増強されるということをつうじて、体内にある高い原子番号の諸元素が放射線リスクを増強する(註:自然バックグラウンドの電磁放射線が、体内吸収されている高い原子番号の諸元素に当たると、光電子効果によって新たに電子が放出されて、放射線リスクが増強される)ことを論証する新しい研究に注目している。本委員会は、この効果こそウラン元素の被曝から生じる健康被害の主要な原因であることを確認して、このような被曝にたいする荷重係数を作り上げた。本委員会は、ウラン降下物によって被曝した住民にたいするウラン兵器の影響を検討し、ウラン被曝後に観察された異常な健康被害は、このようなプロセスによってメカニズムが説明されると強調しておく。

 

 

質問⑯:ここはウラン兵器の問題だと思いますが、アメリカ政府も日本や各国政府もまだウラン兵器の人体に対する影響を認めていませんね。湾岸戦争やボスニアやコソボ、そしてイラク戦争でも使われ、さまざまな奇形児が生まれていると聞いていますが?

矢ヶ崎:劣化ウラン弾はウラニウム238を使用することに寄ります。核分裂をもたらすものではなく、ウランの質量の大きいことを利用して戦車に穴をあけて破壊するための砲弾です



【市民版ECRR2010勧告の概要―矢ヶ崎克馬解説・監訳】(その1) [1/2] by limitlesslife

[uniting-peace][20313] 【市民版ECRR2010勧告の概要―矢ヶ崎克馬解説・監訳】(その1) [1/2]

みなさまへ   (BCCにて)松元

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【市民版ECRR2010勧告の概要―矢ヶ崎克馬解説・監訳】(その1)

 

矢ヶ崎克馬解説・監訳(松元保昭訳)

 

【註1】これは市民が読みやすく自由に活用することを目的とした、「ECRR(欧州放射線リスク委員会)2010年勧告」に加えられた「理事会概要Executive Summary」(勧告の概要)の翻訳です。矢ヶ崎克馬さんの監修と解説によってかなり理解しやすくなったと思いますが、不適切な翻訳があれば松元の責任であることをお断りしておきます。

■ECRR2010勧告英語原文サイト

http://www.inaco.co.jp/isaac/shiryo/pdf/ECRR_2010_recommendations_of_the_european_committee_on_radiation_risk.pdf

 

【註2】原文には質問と解説はありません。各項目の質問は松元が配し、その解説は矢ヶ崎克馬さんが執筆しています。また、勧告本文にあるいくつかのカッコ内註の用語説明も、矢ヶ崎さんのものです。註のないカッコ内は、原文のものです。

 

 

この報告書には、2003年に本委員会が発表したモデルの改訂版が掲載されている。ここでは、電離放射線被曝による人体への健康影響について本委員会が導き出した結論を概説しており、またこれらのリスク評価の最新モデルを提案している。この報告書は、政策決定者およびこの分野に関心ある人々に向けられており、本委員会が開発したモデルの簡潔な解説とモデルの根拠となる証拠を提示することを目的としている。このモデルの開発は、現行のすべての放射線リスク関係法の根拠となり著しい影響を与えている国際放射線防護委員会(ICRP)のリスクモデルを分析するところから始めている。

 

本委員会は、このICRPモデルは体内の放射線核種による内部被曝への適用については本質的な欠陥があると見なしているが、歴史的に存在している被曝データを扱うという実際的な理由から、内部被曝にたいする核種と放射線ごとの特別な荷重係数を定義してICRPモデルの誤差を修正することに同意し、その結果、実効線量(シーベルト表記)はそのまま使われることになる。したがって、この新しい方法によって、ICRPが公表した致死性がんの全体的なリスク要因および他のリスク作用の大部分は変更せずに使用することが可能となり、またこれらを根拠に制定された法律も変更せずに使用することができる。本委員会のモデルによって修正されるのは、放射線量の計算である。

 

 

質問①:まず、ICRPが戦後から現在に至るまで日本と世界に及ぼしている影響について概略教えていただきたいと思います。

矢ヶ崎:ICRPは、1950年に発足し、アメリカの核戦略に従って、核戦争、核兵器開発、原子力発電の維持・推進のために、被曝の科学あるいは放射線防護学の側面で、犠牲者を隠し、見えなくさせる強力な土台を作ってきました。内部被曝を隠すことは、犠牲者群を隠すことです。これの隠ぺいに成功するかしないかで、原子力発電産業が、巨大な儲けができるかできないかが分かれてしまうのです。被曝を対象とする科学や防護学は、真理探究を行う科学としての具体性と誠実さを維持しては来れなかったのです。
ICRPは、内部被曝を見えないようにした物差しである「吸収線量」という定義(臓器ごとに放射線エネルギーを測る)をもって、「被曝の見方に関する歪められた世界観」を作り上げてきました。リスク―ベネフィット論(公益のためには犠牲が出ても仕方がない)や、コストーベネフィット論(「合理的に達成できる限り」という範囲で限度値を低くする)を展開し、憲法に謳われている「個の尊厳」や生存権を真っ向から否定する考え方を維持してきました。さらに、内部被曝を隠ぺいし続けるためには、内部被曝研究を阻止してこなければならなかったのです。「100mSv以下の放射線に起因する疾病のデータは無い」などに、典型的にICRPの目的意識と彼らの作業結果が現れています。
歴史的に改めて振り返りますと、原爆、ビキニ核実験、原子力発電所等からの放射能漏洩、チェルノブイリ事故等々、実にあらゆるところで、内部被曝の犠牲者隠しを行ってきたのです。「原爆被爆者認定基準」は、1957年の原爆医療法で定義されましたが、現在もまだ、完璧に内部被曝の指標を欠落させたままです。原爆症認定集団訴訟に関わる全ての判決で内部被曝の認定を基礎に、原告側が勝訴しているにもかかわらず、国とそのサポーターは内部被曝を未だに認めていないのです。

 

ICRP体制は、ほとんど全世界の医療機関、教育機関、原子力施設の放射線防護に適用されていて、被曝の見方に関しての巨大な「内部被曝:低線量被曝隠蔽」の維持勢力を形成しているのです。ICRP体制の維持・執行機関は、IAEA、WHO、国連科学委員会、核抑止政策や原子力発電を遂行しようとする各国政府等なのです。

 

質問②:その上で、ECRRが意図したことはどのようなことだったのですか?

矢ヶ崎: 放射線被曝をありのままに認識して、被曝から健康を守ることができる「目」を確保し、防護基準にしていこうというものです。ICRPが内部被曝を考慮していないことで、放射線リスクを過小評価していることを批判し、1997年に結成された市民組織がECRRです。内部被曝を正当に評価できる体系を求め、市民の健康を犠牲にするコスト―ベネフィット論などを批判し、現実の放射線被害を評価できる放射線防護の指針を、「勧告」として2003年および2010年に出しました。

 

 

1、                欧州放射線リスク委員会(ECRR)は、1998年2月の欧州議会STOAワークショップ

においてICRPのリスクモデルにたいする批判が明白に確認されたことを受けて設立され、その後、低線量放射線の健康影響について新たな観点が探られるべきだと合意された。本委員会は、ヨーロッパ内の科学者とリスク評価専門家で構成されているが、他の諸国を拠点に活動している科学者や専門家からも助言や証言を得ている。

 

 

質問③:リスクモデルって何ですか?

矢ヶ崎:どんな被曝の仕方があるか、放射線をどのように測るか、身体に対するリスクの表し方はどうするか、どんな放射線被害が生じるか、放射線被害が生じる割合はどのようなものか、放射線の種類によってリスクが異なるかどうか、等々を、被害が推算できるように定式化したものの総体をリスクモデルと言ってよいでしょう。
リスク判定の概念は2つの要素から構成されます。その二つの要素は、①実効線量をどのように算出するか、②単位実効線量(1Sv)当たりに現れる犠牲者数(リスク係数)をどのように与えるか、です。ICRPは、①吸収線量の定義を臓器当たりとすることを定義しています。これは実効線量を小さく算出することをもたらします。また、②犠牲者を隠ぺいすることによりリスク係数(1Sv 当たりの犠牲者率)を低くすることに努めてきました。ICRPは放射線被害が現れる障害を、がん等に限定して、実際現れる他の多くの健康被害を放射線に起因する病因から外し、リスクをさらに小さくしています。この両者により、とくに内部被曝リスクを極端に過小評価できたのです。小さなリスク係数を保つために、ICRPが行ってきた実践は、米国と日本政府が協力して行った原爆被爆者の内部被曝被害者隠ぺいを踏襲するだけでなく、核実験や原発を含むあらゆる放射線被害の犠牲者を公式記録に載せないようにすることと、内部被曝を研究させないように科学上の専制支配を行うことによって、達成してきたと言えます。

 

 

2、                この報告書は、人間遺伝学的要因から判断して放射線核種によって内部被曝した住民の中に、とくにがんと白血病の疾病リスクが増大しているという疫学的証拠とICRPのリスクモデルとの間にある不一致を確認するところから始めている。本委員会は、ICRPのリスクモデルをこのような(註:ガンや白血病の)リスクに適用させ、その科学的な考え方の基盤に焦点を当てた上で、ICRPモデルはすでに公認されている科学的手法に基づいて確立されたものではないと結論をくだす。具体的にいえば、ICRPは複数の点放射線源からの長期にわたる内部被曝にたいして、急性の外部放射線被曝の結果を適用しており、それを成り立たせている外部放射線による照射の物理学モデルに主として頼っている。

 

しかし、これらは平均化しているモデルであり、細胞レベルに生じる確率的な被曝にたいしては適用することができない。すなわち一つの細胞はヒットされるか、ヒットされないかのどちらかであり、最小の衝撃は一回のヒットだが、この最小の衝撃の倍数で衝撃は時間とともに増加していく。したがって本委員会は、体内の放射線源によるリスク評価においては、機械論に基づくモデルよりも内部被曝の疫学的証拠を優先させるべきだという結論をくだす。

 

 

質問④:ICRPモデルは間違っていると言っていますね。簡単にいうと、どこが間違っているのですか?

矢ヶ崎:ICRPのモデルは、すでに行われている分子生物学的な方法(すでに公認されている科学的手法)に基づいてはおらず、分子生物学以前の機械論的モデルであり、臓器全体で平均化するモデルであることを固執し、維持しようとしていることが最大の誤りです。放射線からいのちを守ることは、現実を客観的にみるという、誠実に科学を実施することで、初めて達成できるのです。真の防護は、科学の進歩と共に防護の観点も方法も変わらなければならないのに、ICRPはそれを拒否し続けていることが誤りの元です。

 

内部被曝は、発展しつつある分子生物学の知見により、分子レベル・細胞レベルで、撃たれるか、撃たれないかの、「被曝の具体性」を見る観点が重要です。放射線被害者を評価するためには、放射線環境にある人々と、放射線環境に無い人々の健康を比較するなど、疫学に裏付けられた「被害を具体的に見る科学の誠実さ」が必要です。内部被曝の評価は、科学的側面だけで言うと、古い体系のモデルを近代化しようとしないICRPモデルでは不可能なのです。
逆に、現実の被害を具体的に誠実に見る代わりに、古い体系の見方を現実に押し付けようとする権威主義・教条主義(科学的側面だけからみれば演繹的手法)を強行しようとしているICRPは実に危険なのです。

 

 

3、                本委員会は、ICRPモデルおよびそれらを根拠としている法制度が包括している原理の倫理的基盤について考察している。ICRPが正当であると主張することは、もはや時代遅れとなっている哲学的理由づけ、とりわけ功利主義的な平均費用-便益計算に基づいていると本委員会は結論する。功利主義は、社会と諸条件が公正であるか不公正であるかを識別する能力を欠いており、行為の倫理的正当化の根拠としてはとうの昔に打ち捨てられたものである。例えばそれは、個人の利益ではなくもっぱら計算された全体の利益のみを考慮しているのだから、奴隷社会を支持するためにも使われうるだろう。

本委員会は、(原子力発電の)操業に起因し公衆成員にとって回避可能な放射線被曝問題には、ロールズの正義論あるいは国連人権宣言の基礎となった考え方のように、権利を根拠付ける哲学が適用されるべきだと提案する。本委員会は、同意なしに放射性物質を放出することは、極微量の放射線量にいたるまで、小さくとも有限な致死的傷害の可能性がある以上、倫理的に正当化することは出来ないと結論をくだす。万一こうした被曝が容認される場合、「集団線量」の算定は関係者すべての活動と時間尺度を考慮して使用すべきであり、そのように全住民を考慮してはじめて危害全体の総和が統合して積算されると本委員会は主張する。

 

 

質問⑤:ここでは、ICRPは倫理的にも間違っていると言っていますね。功利主義というのは商売の論理だと思いますが、倫理的にどこが間違っているのですか?

矢ヶ崎:人権を不都合に思う商売の論理を取るか、人権に基づいて命を大切にするかの、考え方の問題で、ICRPの倫理は人権を軽視するものです。
功利主義は、「公益のためには犠牲が出てもやむを得ない」という考えです。この功利主義を社会に受け入れさせることと、ICRPによる虚偽の放射線防護学で犠牲を隠すことにより、原発企業は生き残って来れたのです。

 

功利主義は、個人個人の承諾なしに放射線に被曝させ、それによる犠牲は「本人責任で、我慢してください」、という受忍強制を伴うものです。医療の現場で、医療に役立つという、本質的で具体的なメリットを前提にして、本人が被曝をすることを、命を守ろうとする願いと共に承認するものとは根本的に異なるものです。人格を尊重し認めている場での被曝とは完璧に異なるのです。

 

これは、日本国憲法の基礎にある「個の尊厳」の考え方に根本的に敵対し、憲法25条の生存権にも、決定的に反する考え方なのです。これは第2次世界大戦の侵略戦争の際に、天皇制ファシズムによって強制された人権否定と共通する基盤を持つものではないでしょうか。

 

 

4、本委員会は、被曝タイプ、細胞、また個人について平均化することに問題が存在するため、「集団に適用される放射線量(註:集団線量)」を厳密に確定することはできず、個々の被曝については細胞レベル、分子レベルにおける影響という観点で扱うべきだと考えている。しかしながら実際に実現することは不可能なため、本委員会は実効線量の算定に新たに2つの荷重係数を加えることによってICRPの考え方を拡張したモデルを開発した。これらは生物学的・生物物理学的な荷重係数であり、内部被曝点線源によって生じる細胞レベルでの時間と空間における電離される密度あるいは分割化(註:電離に粗密の場所ができること)の問題に焦点を当てている。事実上、これらは異なる(アルファ線、ベータ線、ガンマ線などの)特性による電離密度の相異を調整するために採用されたICRPの放射線荷重係数の拡張である。

 

 

質問⑥:「平均化」が間違っていると言っていますが、どうしてですか?それに、ICRPモデルは間違っていると言っていたのに、ここではそれを「拡張したモデル」を使うと言っていますね。どうしてですか?

矢ヶ崎:ここで言う内部被曝線源とは、放射性微粒子のことです。1マイクロメートル直径のサイズの微粒子では約1兆個の原子が含まれています。ここからたくさんの放射線が飛び出し、この微粒子に近接する局所では空間的にも時間的にも大きな被曝を伴います。しかし、微粒子に遠いところでは被曝が及ばないのです。被曝が極端に高い局所と時間的継続から来る特別の被害があります。
臓器という大きなスペースでの平均化は、細胞レベルでのイオン化(分子切断)の密度の高いところも、疎らな所も、全部平均化してしまい、それを臓器全体にわたる均一な被曝に還元してしまうものです。平均化という言葉の具体的な結果は、小さいながら高密度に分子が切断され、それゆえ高いリスクを背負う部分を客観的に評価することを避け、被曝の無いところを含めて臓器全体で平均を取ると、危険な局所部分が何も見えなくなるという結果を招くものなのです。
ECRRはリスクモデルの様式を、すでに世界的に知れ渡っているICRPのリスクモデルに従って展開する道を選んだので、ICRPの加重係数方式に、さらに二つの係数を追加して、現実として展開する被曝をモデルでしっかり表せるように、再現できるようにしたのです。その二つの係数というのは、①内部被曝が放射性微粒子と言われる点線源であり、その周囲に密度の高い被曝を行うことと、時間的にも同一の場所を繰り返し被曝させることを考慮した生物物理学的な係数と、②放射線核種により放射する放射線が異なり、被曝様式(崩壊系列、放射平衡、放射線種、放射線エネルギー等々)も異なることを表した同位体・生化学的係数です。

 

 

5、本委員会は、放射線被曝の放射線源について考察する。新たな同位体の被曝影響を自然放射線による被曝と比較して規格化する試みには注意するよう勧告する。新たな同位体の被曝とは、ストロンチウム90やプルトニウム239のような人工核種による内部被曝だけではなく、核種のマイクロメートルの範囲への凝集(ホットパーティクル)も含まれており、これらはすべて人工核種(プルトニウムなど)および自然核種の形態変化したもの(劣化ウランなど)で構成されている。こうした(註:自然放射能との)比較が、現在は「吸収線量」というICRPの考え方を根拠として行われている。このICRPの吸収線量概念は、細胞レベルの傷害をもたらす結果を厳密に評価してはいないのである。放射線による外部被曝と内部被曝との比較についても、細胞レベルでの影響が量的に全く異なる(註:内部被曝の線量が桁違いに大きい)可能性があるため、リスクを過小評価する結果を招くと考えられる。

 

 

質問⑦:自然放射線と比較してはならないと言っているようですが、ここでは何を勧告しているのですか?ホットパーティクルや吸収線量というコトバも分からないのですが?

矢ヶ崎:自然放射線の線源は、決して多くの放射性原子が集合して放射性微粒子になっている点線源ではありません。例えば、放射性カリウム原子は、自然状態では決して微粒子を構成せず、カリウム原子1万個を集めるとその中の1個だけが放射性原子なのです。放射性原子が同じ場所にかたまっていることは決してないのです。
これは、いわゆる人工放射性原子の状態とは全く異なります。原子炉でつくられる放射性原子や劣化ウラン弾でつくられる酸化物エアロゾールは、ほとんどが微粒子を形成しています。
従って、自然放射性原子(K40等)から放射される放射線は、他の自然放射性原子(K40等)から放出される放射線が打撃した同じ場所を、打撃するようなことは無いのです。
この場合の被曝状況は臓器全体で平均化したものとさほど変わりはないのです。ICRPで算出する方式によって推算が可能なのです。ところが人工の放射性核種はほとんどが集合体(微粒子)を形成し、この微粒子(点線源)から継続して密集した放射線が放出され、この微粒子の周囲には大変高い被曝領域(電離あるいは分子切断が密集している)状態が出現します。散漫な被曝を行う場合とは危険度が全く異なるのです。ICRPでは、吸収線量は臓器ごとの単位(あるいは全身)というマクロな単位で、その中に放射線が与えたエネルギーの量だけを計算し、それをその質量で割る(シーベルト単位で与えられる)ものです。繰り返しになりますが、ICRPでは局所(ベータ線の場合は半径1センチメートル程度の球内)のリスクは推定できない(無視する)のです。
この事情は、炭素14、海水中のウラン238、等々、あらゆる自然放射性原子に当てはまります。さらに宇宙から飛んでくるニュートリノ等の宇宙線は透過性が高く、物体とは非常に弱い相互作用をしますので、ガンマ線の場合同様、疎らな被曝を与え、相対的リスクは人工放射能より低いものです。

ホットパーティクルは高密度に電離される領域、あるいは周囲に高密度で被曝を与える放射性微粒子を言います。

 

 

6、本委員会は、最近の生物学、遺伝学、およびがん研究の分野での発見によって、ICRPのDNA細胞ターゲットモデルはリスク分析の信頼に足る根拠とはなりえず、さらにこのような放射線作用の物理学モデルは、被曝住民にかんする疫学的研究よりも優先させるべきではないと主張する。最近の研究結果は、細胞への衝撃から臨床的疾病へといたるメカニズムについては、まだわずかな解明しか進んでいないことを示唆している。本委員会は、被曝にかんする疫学的研究の根拠を考慮し、被曝による傷害という明白な証拠をもつ多くの実例が、根拠のない放射線作用の物理学モデルを基礎にしたICRPによって無視されてきたと指摘する。

 

本委員会は、これらの研究を放射線リスク評価の根拠として復権させる。したがって、セラフィールドで観察された小児白血病集団の症例数とICRPモデルの予測値との間に生じた300倍という差は、このような被曝にともなう小児白血病のリスクのひとつの評価軸となる。こうして本委員会によってこの係数は、子どもたちを対象としたシーベルト表記の「実効線量」を算出する荷重係数の中に加えられ、特定タイプの内部被曝による傷害算定の中に組み入れられている。

 

 

質問⑧:「物理学モデル」と「疫学的研究」の違いについて書かれているようですが、どうして300倍もの差がでてしまったのですか?

矢ヶ崎:物理学モデルというのは、ICRPが採用している「吸収線量」定義に代表されます。被曝の具体性を無視して大きな臓器で平均化する方法です。このモデルは、質量が1kg以上の臓器ごとというマクロ的なスケールで、その臓器に「吸収された放射線エネルギー」だけで被曝を定義します。ここでは分子生物学的な、細胞単位のミクロな目で確認できるような被曝の具体的展開を一切捨て去った、平均化と単純化を行うのが特徴です。
1990年のICRP勧告では、「吸収線量はある一点で規定することができる言い方で定義されているが、しかし、この報告書では、特に断らない限りひとつの組織・臓器の平均線量を意味する」と、内部被曝を見ないことを露わな形で述べています。
これに対し、2007年勧告では、微分方程式を出し、一見ミクロな観点から吸収線量を定義し、内部被曝も線量として計測できる見方をしているように見せています。しかし、実態は上記した1990年定義を粉飾しただけなのです。
計測するサイズを表す概念として「質量素」という言葉を使用し、「微少」エネルギーを「微少」質量で割るという定義式を与え、ミクロに分割しているように錯覚を与えます。私が、何故「錯覚を与える」などと表現するかと言いますと、本来の数学的定義では、エネルギーはこの質量素に吸収される全エネルギーで無ければならないのです。ところが、“驚くことにICRP2007年勧告では、全エネルギーではなく”「平均エネルギー」という概念を、この定義式のエネルギーに使用しているのです。数学的表現ではミクロに見せかけているのですが、実質はあくまで「計測単位はマクロ量(臓器単位)」を陰湿にこっそりと主張して定義式前に述べている「臓器ごとに平均する」という言葉による定義と矛盾ないようにしているのです。

 

ここで言う物理学的モデルとは、物理学的モデル一般のことを言っているのではありません。被曝の具体性を一切捨象して平均化と単純化を行い、均一化されたエネルギーだけで被曝を見るICRPの見方を指しています。原発推進の世俗的支配をうけるというようなことが一切ない他の純粋物理学で、れっきとした客観的事象を数式化している物理学的モデルとは異なっているICRPの物理的モデルを指します。一般的に科学の分野では、個々の研究が具体的に展開していれば(具体性の無いものは科学とは言えないでしょう)、具体性を消去したり、複数の要因をひとつだけ取り出して、その応答を見たりする単純化や平均化は、物事の本質をえぐりだすのに有効な手段です。

 

これに対してICRPは、具体的に被曝を探究するという具体性を排除している上での単純化・平均化ですので、科学の手段ではなく、教条化・権威主義化の手段となっているのです。

放射線を作りだす商売をしていると、商売による現実的利益と放射線による犠牲者の両極が現れます。「何を重視してリスクモデルを作るか」が現実的に大きな社会的問題となります。ここでは、純粋科学には無いICRP特有の、被曝の物理的モデルを言っているのです。
このリスク評価は、アメリカの核兵器を残虐兵器と見せないために、枕崎台風を利用して、台風で洗い流された後で測定に入らせ、かろうじて土の中に残存していた放射性物質量を、はじめから「これしか無かったのだ」とさせた、犠牲者切り捨てのための科学的粉飾を皮切りにしています。原爆犠牲者のうちの、放射性降下物を体内に取り入れた内部被曝者を、被爆者から一切排除して(非被爆者として扱い)、これらの被爆者を初期放射線による「被爆者群」の参照群(被曝していない群)に仕立てたリスク評価と相まって、極端なリスクの過小評価を行っているのです。
ICRPモデルは、歴史的な長期間にわたって、世界の被曝を見る目を歪めてきました。米核戦略の犠牲者隠しに指導された政治の科学支配の典型的現れなのです。
このモデルの適用の仕方は、まずICRPの考え方ありきで、「ICRPによれば、そんな放射線被害が生じるはずがない」という、権威主義、教条主義的に現場の被害を切り捨てる、演繹的手法を特徴としてきました。福島事故の後、様々に現れている身体影響を、多くの医師が「「ICRPによれば、そんな放射線被害が生じるはずがない」として医療現場で切り捨てていることを聞いていますが、是非、現実に医の倫理を持って対応していただきたいものです。

 

これに対し、「現場に放射線の被害者がいる」という事実から出発する「事実を科学的な目で客観的にとらえる」ことが、そもそもの人権に基づいた「放射線防護」なのです。この「事実に基づいて被曝を明るみに出す」方法として適用した科学手法が帰納法であり、科学的手法としては疫学的方法なのです。
300倍というのは、疫学的方法で確認された現実とICRPにより導出されるリスク評価の差なのです。内部被曝の状態によっては1000倍ほどの差が考察できます。現実の被害に対してICRPモデルは「その300分の1」の被害しか予測しない過小評価の体系なのです�