恐れていたことが起きた。

沖縄の米軍普天間飛行場に隣接する普天間第二小学校の校庭に、米軍の大型ヘリコプターCH53Eから鉄製の枠がついた窓が落ちてきた。重さは約8キロ。すぐ近くで児童約60人が体育の授業をうけており、惨事に至らなかったのは偶然でしかない。

米本国ならば許されない運用がまかり通っているとして、地元の宜野湾市は、事故の危険性をかねて指摘してきた。

本来、米軍基地の滑走路の延長線上には、住宅や学校などのない「クリアゾーン」を設けなければならない。だが普天間にはこの決まりが適用されていない。クリアゾーンにあたる地域には、約800棟の住宅と18の公共施設があり、普天間第二小学校はそのひとつだ。

「できる限り学校、病院の上は飛ばない」という日米合同委員会の協定は空文化しており、同校は「米軍機が墜落して有毒ガスが発生した」との想定で避難訓練を行っていた。そんな日常を送る子どもたちが、どこにいるだろうか。

事故を起こしたヘリは、10月に沖縄・高江に不時着し、炎上したのと同型機だ。米軍は原因を明らかにしないまま、1週間後に飛行を再開した。

そして今回、再び住民が危険にさらされた。「整備の手順や運用に問題はなかった」とする2カ月前の説明は何だったのか。米軍は整備・点検体制を洗い直し、両方の事故の地元に再発防止策を直接説明するべきだ。形ばかりの飛行停止措置などでは済まされない。

日本政府の姿勢にも憤りを禁じ得ない。名護市の海岸でオスプレイが大破したのがちょうど1年前。米軍への飛行自粛要請、ごく短期間の受け入れ、一方的な再開、政府の容認――という光景がくり返されてきた。およそ主権国家の体をなしていない、恥ずべき従属である。

普天間の危険性の除去は最優先の課題であり、だから辺野古への移設を進めると安倍政権は唱える。だがそれは、辺野古の周辺に危険性を移し替えるだけで、沖縄県民に重荷を押しつけることに変わりはない。

日米両政府が普天間返還に合意した96年当時のペリー国防長官は最近、米軍の抑止力にとって、必ずしも基地を沖縄に置かねばならないわけではない旨の発言をしている。

こうした声に耳を傾け、沖縄の負担軽減に本気でとり組む必要がある。ひとたび大きな事故が起きれば、日米安保体制そのものが大きくゆらぐ。その現実を政府は直視すべきだ。

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