昨年のこと、朝起きたら左耳が聞こえない

西日本新聞 読書館 「神になりたかった男 徳田虎雄」
2018年1月21日 山岡淳一郎著 平凡社・1944円

昨年のこと、朝起きたら左耳が聞こえない。
あわてて耳鼻科へ行くと、突発性難聴です、入院ですねといわれた。
最寄りの総合病院は徳洲会で、内心あそこは嫌だなと思った。
しかし「高気圧酸素療法もできる徳洲会病院がいいでしょう」
とあっさり勧められ、2週間入院することになった。
意外や、実に良心的な病院である。
なぜ内心嫌だと思っていたのか。

まず、一代で巨大病院グループを作り上げたという徳田虎雄
の独裁者的イメージ。
政界にも乗り出し、筋萎縮性側索硬化症という難病で全身不随に
なりながらも全組織を支配する怪物。
数年前には、公職選挙法違反の容疑で一族が起訴された。
最近では、次男の徳田毅から猪瀬直樹東京都知事が5000万円を受け取って、
カバンに入る入らないでもめた一件がある。
いい印象をもてという方が無理だ。

流布する負のイメージと体験した良質な医療現場とのギャップを
埋めあぐねていた。
そこへ本書である。
徳洲とは徳田虎雄の育った徳之島のことである。
原点には、医者に診てもらえずに死んだ弟の姿がある。
その怒りと悲しみに支えられ
「爪を岸壁に立ててよじ登るようにして医者になった」。

徳田の目指す医療とは何か。
「庶民の命と生命を守るものだ。
医者の都合で救急患者を断るのはもってのほか。
すべて受け入れよう。
患者さえ集まれば病院は経営できる」。
これまでの病院はそうではなかったのか?
そこから医療空白地帯に病院を建て、年中無休24時間、
誰でも診るというコンセプトが生まれた。
いわば庶民の側からの医療変革を目指し、
徹底的なコストダウンで経営し、チェーン店舗を増やすように
病院を作った。
そうはさせじと立ちふさがるのが医師会。
それを突破するために政治力が必要だった。
こうして徳田は政界へ進出していく。
さらに必要なのが資金だった。

小説のような展開だが、医療は単純な善悪で片付くはずがない。
シロウトには判断が難しいだけに、風評やイメージに
左右されないためにも、本書は貴重な判断材料になる。

(評論家 梁木靖弘)

やまおか・じゅんいちろう ノンフィクション作家。
著書に「長生きしても報われない社会」など。
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MLホームページ: https://www.freeml.com/uniting-peace

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