トランプ米政権は23日、「2019年末まで」としてきた在イスラエル大使館のエルサレム移転を、イスラエル建国70周年の今年5月に前倒しすると発表した。11月の米中間選挙を前に、移転を望むキリスト教保守層に配慮して大統領選の公約を実現させる。昨年12月にトランプ大統領エルサレムイスラエルの首都と宣ログイン前の続き言した後も、反米のうねりは起きず、判断を後押ししたとみられる。(ワシントン=杉山正、エルサレム=渡辺丘)

米国務省が23日に出した声明によると、フリードマン大使と少数の職員が西エルサレムにある米領事施設に移り、そこを暫定大使館にする。開館は「イスラエル建国70周年に一致させる」とし、建国70周年の5月14日になるとみられる。

その上で、来年末までに暫定大使館を拡張し、同時にエルサレム市内の別の場所で用地を取得し、新たに大使館を建設する。

トランプ氏は首都宣言で、東エルサレムを将来の独立国家の首都とするパレスチナ自治政府や、国際社会から非難を浴びた。米国に宣言撤回を求めた国連総会決議は、128カ国の賛成多数で採択された。

トランプ氏は23日、ワシントン近郊で開かれた保守政治活動会議の年次総会で演説。首都宣言について、「私は『我々はやらなくてはならない。正しいことだ』と言った。そして実行した」と強調すると、盛大な拍手を受けた。トランプ氏の支持基盤である保守層の多くは親イスラエルで、米大使館のエルサレム移転を望んでいる。移転前倒しは、11月の米中間選挙を前に、大統領選の公約の実現を示す狙いがあることは明らかだ。

米国では1995年、同大使館移転法が成立。大統領は半年ごとに移転を先送りするか判断しなければならない。昨年12月、トランプ氏は先送りを決めたが、次は中間選挙前の最後の判断になる。先送りすれば支持者は不満を抱くと考えた可能性がある。

一方、首都宣言後、パレスチナ自治区に広がった対米抗議行動は今は下火になっている。イスラム諸国でも、首都宣言に対する抗議デモは収まっている。

トランプ氏は、移転に踏み切ることで国際社会から非難を浴びるよりも、中間選挙を前に決断を先送りすることの方がリスクが大きいと判断したとみられる。

■反米で結束、不透明 アラブ諸国

イスラエルのネタニヤフ首相は23日、「(5月14日の)建国70周年がさらに素晴らしい国家的祝賀になる」と米政権に感謝した。

パレスチナ側は翌5月15日をナクバ(大破局)と呼ぶ。イスラエル建国に反発したアラブ諸国が攻め込んで第1次中東戦争が起き、約70万のパレスチナ人が難民になったためだ。例年、この日に対イスラエル抗議行動が行われるが、今年は大規模になるとみられる。

パレスチナ解放機構の和平交渉責任者エラカート氏は23日、「ナクバ前日に米大使館をエルサレムに移す米国の決定は、(イスラエルと将来のパレスチナ国家の)2国家共存を崩壊させる」と非難。米国が仲介する中東和平交渉の再開はいっそう困難になった。

パレスチナの後ろ盾になっているアラブ諸国も、米国を非難するとみられる。だが、トランプ氏は昨年5月、就任後初の外遊先にサウジアラビアを選び、巨額の兵器売却契約を結んだ。親米国でイスラエルと国交があるエジプトヨルダンも、米国から多額の軍事・経済援助を受ける。アラブ諸国の多くは支援してくれる米国に対し、強硬姿勢を取れないのが実情。大使館移転の前倒しを受け、アラブ諸国が結束して反米運動を展開できるかは不透明だ。