貿易交渉、日貿易交渉、日本は「失うだけ」? 日米「密約」疑惑、参院選前に明かせないのは本は「失うだけ」?

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貿易交渉、日本は「失うだけ」? 日米「密約」疑惑、参院選前に明かせないのは

ゴルフ場でドナルド・トランプ米大統領(左)とラウンドする安倍晋三首相の自身のツイッターに投稿された=千葉県茂原市で5月26日(共同)

 「外交が得意」と自画自賛するあまり、安倍晋三首相はつまずいたのではないか。5月下旬に来日したトランプ米大統領との会談である。ゴルフ、大相撲観戦、炉端焼きの会食と「おもてなし」攻勢を掛けたが、日米貿易交渉を巡り「密約」が交わされたとの疑惑が拭えない。トップ同士の「ディール(取引)」の中身を探った。【石塚孝志】

 日米の「密約」説の発端は、トランプ大統領のツイートだ。これまでもツイートでしばしば世界を揺るがしてきた。今回の来日時も例外ではない。安倍首相とゴルフを終えた5月26日、「日本との貿易交渉で大きな進展が得られつつある。農業と牛肉が焦点だ。7月の選挙後まで待つことになるだろう。その後、大きな数字を期待している」と発信した。

 日本の政財界は動揺した。「大きな数字を期待」とあったことから安倍首相が大幅に譲歩するとの「密約」を交わしたのではないか、という臆測が流れた。

 実は「密約」の前段とも言えそうなやり取りがあった。4月末に米国で行われた首脳会談。安倍首相は、貿易交渉の早期妥結を迫るトランプ大統領に対して「参院選を考慮してほしい。その代わり大統領選も頭に入れていると伝えた」と毎日新聞を含む複数のメディアが報じていたのだ。

 「令和初の国賓」と安倍政権が持ち上げたトランプ大統領の来日を、米大統領選に詳しい海野素央(うんのもとお)・明治大教授は「今回の首脳会談の隠れた議題は、お互いの選挙協力」と見ている。トランプ大統領の来日直前に訪米し、体験したことを踏まえた分析だ。現地では大統領陣営や、民主党有力者の支持者集会に参加。米中貿易戦争の影響で、中国が農産物に報復関税を掛けたことで、米国の農家が廃業に追い込まれている事態を知った。

 「再選を目指すトランプ大統領は、中国との貿易交渉が難航する中、早期に日本市場で農産物輸出拡大の成果を得たいのです」と海野さんは説明する。

 その狙いは、トランプ大統領の北朝鮮拉致被害者家族との面会にもあったという。「拉致問題解決の協力を約束するとともに、安倍首相を持ち上げました。これだけ協力したのだから、次は貿易交渉に合意して大統領選への協力を頼む、というギブ・アンド・テークでしょう」

 日本側の「果実」は「参院選後まで合意内容を口外しない」ということなのだろうか。

 そもそも日米貿易交渉は昨年9月、日本の農産物の関税の引き下げ幅について「環太平洋パートナーシップ協定(TPP)水準が限度」で合意した。しかし、トランプ大統領は5月27日の日米首脳会談の冒頭、「貿易については、おそらく8月に両国にとって素晴らしいことを発表するだろう」と一方的に期限を告げた。会談後の共同記者会見では「私はTPPとは関係がない。何も縛られていない」とまで言い切った。

 一方、安倍首相の対応について「交渉になっていない」とあきれるのは、金子勝・立教大特任教授(経済学)だ。「トランプ大統領の友人なら、このような発言をたしなめなければいけないのに、安倍首相は一切反論していません。また、対等の立場に立ち『我が国の国益はこうだ。この条件だけは最低限守ります』というメッセージを国民に示さなければいけないのに、それもしない。選挙前に公表されるとまずいのであれば、相当ひどい内容の密約があったということでしょう」と話す。

 「密約」を交わしたとすれば、日米貿易交渉はどう進んでいくのか。鈴木宣弘・東京大教授(農業経済学)にシナリオを予測してもらった。

 (1)日米貿易協定が発効した時点で、米国を除いて締結したTPP11諸国との差がなくなるように、関税削減スケジュールを前倒しする。

 (2)TPP11で日本が譲歩したバター・脱脂粉乳の輸入枠7万トン(生乳換算)は、米国が交渉から抜けた後も変更せずに適用したため、米国分が加われば輸入枠はTPP水準を超すことになり、日本の酪農家の打撃に。

 (3)新NAFTA(北米自由貿易協定)が、日米貿易交渉の土台になる。例えば、TPPの基準を上回る自動車部品などの原産地規則が強化されるほか、遺伝子組み換え食品を含めた食の安全基準が貿易の妨げにならないように緩和される。

 (4)輸入品の関連が疑われる死亡事案が発生しても、因果関係が特定できるまでは規制してはいけないという米国の「科学主義」の基準が持ち込まれる。

 (5)日本が、発効済みの自由貿易協定よりも有利な条件を米国に与えると、他の協定締結国からも米国と同じレベルの自由化を要求される可能性がある。それを日本は拒むことができず「自由化ドミノ」が起きる。

 要は、日本は不利になりそうな展開ばかりだ。鈴木さんは「これらは最低ラインです。当然、これ以上のものが出てくる」と述べ、さらに「安倍政権は日本の農や食を差し出して、自動車産業の利益を守ろうとするでしょうが不可能です。なぜなら米国政府が日本の言い分を認めたとしても、米国の自動車業界は『自分たちには関係ない』とばかりに、自動車の追加関税や輸出数量制限、政府の為替介入による円安誘導を制限する『為替条項』を求めるからです。日本にとって『失うだけの交渉』が続くのです」と指摘するのだ。

実態は「都合のいい国」

 安倍首相は「強固な日米同盟」を強調するが、実態は違うのか。そんな疑問を日本総合研究所会長の寺島実郎さんにぶつけると「日本は米国にとって重要な同盟国ではなく、トランプ大統領にとって都合のいい同盟国になっていることに気付くべきです」と話し始めた。

 寺島さんは、訪日の約1週間後に英国を国賓で訪れたトランプ氏の言葉に注目した。「英国とは『自由と法の支配という価値を共有している』と語りました。一方、日本ではそれを語らないどころか『力による平和』というメッセージを残して去りました。つまり『自由と法の支配』を共有した同盟国と思っていないからです。例えば『(森友学園問題で)財務省の局長が公文書を改ざんしてまで権力を守らねばならない国が“自由と法で支配”された国ですか?』との問いにどう答えるかです」

 しかも現在の日本は扱いやすい国に見られているようだ。「トランプ大統領にとって中国や韓国などアジアの国々と連携できない孤立した日本は都合がいいのです。長期的な視野で見れば米国にとって本当に必要なのは、成熟した民主国家として、またアジアの大きなまとめ役として力を発揮できる日本のはずです」

 果たして日米貿易交渉はどこに向かうのか。「8月に新たな段階が明確に見えてくる。防衛装備品の輸入拡大と米国企業のカジノ進出、農産品関税の大幅引き下げの3点セットを日本に受け入れさせれば、トランプ大統領の戦果です。蜜月を装っても、信頼できる国家関係は築けません」。やはり「日本不利」との見立てだ。

 前出の海野さんは、トランプ大統領が再選を目指す意向を表明すると見られる18日(日本時間19日朝)の米フロリダ州の支持者集会での発言に注目する。

 「米国メディアに今回の訪日は観光だったと批判されたこともあり、トランプ大統領は、これだけタフな交渉をしてきた、とアピールするでしょう。TPPを上回る農産物の関税引き下げを決めてきたと“密約”をばらしてしまうかもしれません」

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