「金のライオン」 強者にこび、弱者こきおろす

松尾貴史のちょっと違和感

「金のライオン」 強者にこび、弱者こきおろす

=松尾貴史さん作

 この国の最高権力者は、自分よりも強い力を持っているトランプ米大統領のような者にはこびへつらうけれども、自分たちより力を持たない勢力のことを悪(あ)し様にこき下ろすことが大好きなようで、自分は6年も7年も権力をほしいままにしているのに経済も文化も教育も人権問題も劣化させるばかりであることは棚に上げて、いまだにたった3年間だけ明け渡した民主党による政権の時代を「悪夢のような」と表現する。

 政敵とはいえ、仮にもこの国を良くしようという公的な集団とその仕事について、最低限の良識や礼節さえわきまえていれば、現在権力の座にいる者としてこのような汚らしい手法でおとしめるというのは恥であることを自覚するものだが、何も感じないようだ。悪夢のように感じていたのは自分と自分の周辺だけだろう。悪夢を見ている国民は、今の方が多い。

 参議院選挙が近づいてきた。通常は、進めたい政策や実績について国会で活発に議論をして、少しでも国民に理解を求めるところなのだろうけれど、現政権与党は争点隠し、報告書隠し、そして安倍隠し(異論を唱えるものがいない場にのみ出演するが)に余念がない。野党4党で合わせて45分という短時間の党首討論をおざなりでやっつけるまではするけれど、単にその絵が新聞やニュースに扱われるための「やったフリ」でしかない。

 規定以上の議員による要求があるにもかかわらず、衆議院の予算委員会は3カ月以上開かず、立憲民主党の逢坂誠二衆院議員がそのことについて動議を発するも、否決にして発言すら許さない。野党を数の力でやっつけ、しのいだ気になっているのかもしれないが、これは国民に対する冒とくでしかない。こんな悪辣(あくらつ)でひきょうな政権がかつてあっただろうか。

 ところで、各地で朗読のワークショップを不定期に開いている。参加者は老若男女、現役のアナウンサーやキャスター、弁護士、国会議員、会社員、主婦、医師、教員、学生などで、伝える手法、訴える力、プレゼンテーション能力、子供への読み聞かせ、大勢の前での読み方や話し方の技量の向上を図るなど、職業や目的もさまざまだ。

 前回は、場所の提供もしてくださった大阪市の隆祥館書店の二村知子さんによる絵本の朗読が注目を集めた。二村さんは、今の出版におけるお仕着せ圧力的な流通の形に疑義を唱えつつ独自の仕入れと販売のスタイルを追求する気骨ある書店主で、かつてはシンクロナイズドスイミング(現在でいうアーティスティックスイミング)の日本代表だった人だ。

 題材は、「二番目の悪者」(小さい書房刊、作・林木林、絵・庄野ナホコ)という絵本で、金色のたてがみを持つライオンが、自分こそが国王にふさわしいと名乗りをあげるが、国中の評判はもう一頭の銀色のたてがみのライオンに向いていた。金のライオンは、あろうことかひきょうな行動に出る……という話で、もちろん子供向けの作り話なのだが、物語が進むほどに、集まった大人たちが最後まで固唾(かたず)をのんで聴き入ってしまった。この日本で今起きていることを想起させる、まことに心がざわつく話だったのだ。多くの人が共有している情報が、いかに怪しいものかという教訓が凝縮して語られている。

 百獣の王というイメージのせいか、権力者がライオンに例えられることがよくあるが、もう一冊、「檻(おり)の中のライオン」(かもがわ出版刊、著・楾大樹)という、憲法の解説書がある。わかりやすいイラストレーションを使って、「権力者=ライオン」「憲法=檻」という比喩で、明快に教えてくれる良書だ。これは、徳島で開いたときに参加者から紹介されたもので、このライオン関連の2冊は、ぜひ学校や家庭での活用を強く推したい。(放送タレント、イラストも)

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