首相、火消しに躍起 桜を見る会、取材対応２回
首相主催で開かれてきた「桜を見る会」を巡り、安倍晋三首相は１５日、首相官邸で２度にわたって取材に応じる異例の対応を行い、「火消し」に躍起となった。首相は菅原一秀前経済産業相、河井克行前法相の閣僚辞任に際し、当人が説明責任を果たすべきだとの発言を繰り返しており、自身を直撃する問題でその言葉が自分にはね返ってきた。【宮原健太、野間口陽】
首相官邸記者クラブは１５日午後に、桜を見る会の問題と、中国が拘束していた北海道大学教授の解放についての取材対応を要請した。同日夕、首相秘書官が「これから応じる」と記者団に伝達。約１０分後にロビーに現れた首相は「さまざまな報道があり、事務所から詳細について今日報告を受けた」と語り始めた。
首相のぶら下がり取材は１、２問程度で終わるのが通例で、内閣改造などでの記者会見ですら３、４問程度で終了する。しかしこの日は２回取材に応じ、２回目は３０問超の質問に約２０分間かけて答えた。首相から「この点に関して質問ありますか」と促したり、記者会見を開く意向を問われると「改めて会見するというなら今質問してください」と答えたりする場面も。首相周辺によると「質問が尽きるまで終わらせない」との方針で臨んだといい、この日の２回の取材対応で問題に終止符を打とうとする思惑が浮き彫りになった。
昼の１回目の取材対応では「政府としては、国会から求められれば出ていって説明するのが当然だ」と述べたが、実際に国会質疑に応じるかは不透明だ。野党は予算委開催を求めるが、与党は首相が出席しない内閣委審議での幕引きを図る。
野党は「この問題は首相しか説明できない」と追及を強めていた。首相は２閣僚の辞任を受けた６、８日の衆参予算委員会で「政治資金の問題で指摘があれば、内閣にいる者であろうと、そうでない場合であろうと政治家として説明責任を果たすべきだ」などと答弁。「説明責任」は議員本人に委ねられるべきだとの考えを示してきた。閣外に去った議員に対する内閣の説明責任を回避する狙いがあったとみられるが、その発言が裏目に出た。
野党は予算委開催を求めるとともに１５日、「何人が安倍事務所の紹介で参加したか」などの公開質問状を、議員会館内の首相の事務所を訪れて手渡した。その３時間後に首相がマスコミを通じて答え、反発は深い。立憲民主党の安住淳国会対策委員長は「『不意打ち言い訳会見』だ。我々が準備していることに一切答えず、国会に対しても大変失礼だ」と怒りをぶちまけた。
前夜祭５０００円「ホテルが勘案」 首相「毎年利用」
「桜を見る会」の前日に開かれた「前夜祭」の会費が５０００円だったことについて、安倍晋三首相は１５日夕の取材対応の際に「ホテル側が設定した」と述べた上で、「毎年使っているとか、どれぐらいの規模とか、宿泊しているとか、他のホテルの競合とか、ホテル側は総合的に勘案して決めているのだろう」と語り、会費の水準に問題はなかったとの認識を示した。
「前夜祭」は２０１２年末の第２次安倍内閣発足後に毎年、桜を見る会の前日に東京都内のホテルで開かれている。今年はホテルニューオータニで行われており、野党は「相場より相当安い」と問題視し、差額を首相側が負担した可能性があると主張している。
こうした指摘に対し、首相は「かなり多くの人数が宿泊し、定期的に毎年行われている」と反論した。
会費については政府・自民党から擁護の発言が相次いだ。
菅義偉官房長官は１５日の記者会見で「ホテルに趣旨を話すことで柔軟に対応いただける。１００人来れば１００人（分の）立食を用意することはない。通常、（参加者数の）何割掛けで（食事の用意を）やっている」と述べた。
自民党幹部も「人数分の料理は注文しない。予算に合わせてその辺は調整できる」と話し、官邸幹部は「（比較的低価格の）唐揚げを増やすなど、やり方はある」とも語った。【宮原健太、秋山信一】
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