募ったが募集していない…衆院予算委の首相答弁から「桜を見る会」三つの疑問を整理

募ったが募集していない…衆院予算委の首相答弁から「桜を見る会」三つの疑問を整理

衆院予算委員会で「桜を見る会」を巡る問題について安倍晋三首相(中央右)の答弁姿勢などに抗議する質問者の辻元清美・立憲民主党幹事長代行(左列手前)ら=国会内で2020年2月3日午後4時28分、川田雅浩撮影

 2020年度予算案が実質審議入りした3日の衆院予算委員会で、首相主催の「桜を見る会」の問題を野党が引き続き追及した。昨年の臨時国会から未解明で積み残されているのが「公的行事の私物化」「首相後援会主催の前夜祭」「公文書管理」の三つの疑問だ。安倍晋三首相は今国会でも代表質問や予算委で、「脱法行為だ」などの指摘に正面から答えていない。首相枠推薦の「幅広く募ったが、募集はしていない」との答弁に象徴されるように、ほころびも見え始めた。【大場伸也】

疑問その1「公的行事の私物化」  

 3日の予算委のトップバッターで質問に立った自民党の岸田文雄政調会長は、「桜を見る会の問題、IR(統合型リゾート)を巡る一連の疑惑など、国民の信頼を揺るがす事態が発生している。反省すべきものは真摯(しんし)に反省し、説明責任を果たす必要がある。首相や政府にしっかり対応を求めていきたい」と、より丁寧な説明に努めるよう首相に求めた。

 首相は「まさに国民の信頼こそが政策を進めていく力だ。説明すべきは真摯に説明し、選挙で約束したことを実行することで、信頼を勝ち得ていきたい」と応じた。

 首相が政府の公的行事である桜を見る会を「私物化」し、多くの後援会関係者を集め、接待していたのではないかという疑惑。本来、「功績・功労」のある人を招く会の参加者を、首相事務所が「募集」してもいいのか? 野党の追及に首相の答弁は迷走した。

 1月28日の衆院予算委で、宮本徹氏(共産党)は、首相事務所が参加申込書を支援者にコピーさせ、その知人・友人らを募集していたと指摘。首相は「幅広く希望者を募ることは承知をしていた」と認めた。

 さらに「募集しているといつからご存じか」と問われると「幅広く『募っている』という認識で、『募集』しているという認識ではなかった」と意味不明の答弁。宮本氏は「募るというのは募集と同じですよ。募集の募は、募るという字なんですよ」とあきれるしかなかった。

 首相は「事務所が(招待に)ふさわしい方々に声をかけている。例えば新聞等に広告を出してどうぞ、ということではない。事務所が募る上で推薦者がいるので、その段階でチェックされる」と釈明した。

安倍晋三首相は「桜を見る会」三つの疑問に答えたか

 しかし、翌日の参院予算委で、蓮舫氏(立憲民主党)に「首相事務所はコピーで申し込んだ人を、どうやってふさわしいと判断したのか」と質問されると、「地方だから、大体どういう人か分かる」「チェックするといったってそれぞれ限界がある。(後援会など)誰かの推薦があれば、これはふさわしいだろうと」と答弁が右往左往したあげくに、「最終的な責任を負うのは内閣府。内閣府でふさわしいかを含め取りまとめている」と官僚に責任を押しつけた。

 そもそも、内閣府のトップは首相だが、首相は「実際には私は事務を行っているわけではない」として「招待者は、最終的に内閣官房および内閣府で取りまとめており、公職選挙法には抵触しない」と繰り返している。

 だが、功績・功労に関係なく、首相事務所が推薦すれば、内閣府などが自動的に招待する「ノーチェック」だった疑いは晴れない。野党は「首相事務所が何年に誰を推薦したのか、名簿で確認してほしい」と求めたが、首相は「事務所にはもう、名簿は残っていない」と強弁し、首相枠の推薦プロセスを明らかにしようとはしない。

疑問その2「首相後援会主催の前夜祭」

 首相後援会主催の前夜祭を巡っては、会費5000円が安すぎ、首相後援会が不足分を補塡(ほてん)したのではないかという公職選挙法違反の疑いが残されている。前夜祭で提供されたサービスや価格が分かる明細書の公開を「(会場の)ホテルが応じない」と首相が言い続けていることも疑惑に拍車をかけている。

 首相は1月23日の参院本会議で「明細書は、営業の秘密に関わることから、どのような形であれ、第三者への公開を希望しないというホテル側の意向を尊重すべきだ」と答弁。福山哲郎氏(立憲)の「国会の秘密会で開示を」という求めを、ホテル側の事情を理由に拒否した。

 さらに、同31日の衆院予算委で、立憲などの会派の山井和則氏(無所属)に「いったん事務所がお金を受け取っている。主催者である首相後援会がホテルと契約したのではないか」と質問され、首相は「主催は後援会だが、契約の主体は個人で、個人が支払った」と答弁した。

 この答弁に衆院第1委員室は「ありえない」と騒然となった。山井氏が「(参加者)800人の一人一人が、ホテルニューオータニと契約するはずがない。会費5000円という価格を決めたのは、ホテルと参加者か?」と聞くと、笑い声が上がった。それでも首相は、あくまでも参加者個人がホテルに「直接払い」したという主張を崩さず、後援会としての収支はなく、政治資金収支報告書に記載する必要はないと繰り返した。

 だが、価格設定や段取りの相談はホテルと首相事務所の間でなされている。参加者から会費を集めた時点で収入が発生し、集金した約400万円をホテル側に手渡した時点で支出が発生しているのではないかとの疑念は消えない。

 「これが許されるのなら、政治家は何千人の親睦会を開いても、すべて収支報告書に書かなくていいことになる。政治活動の公明・公正を確保する政治資金規正法の趣旨に反する」

 2月3日の衆院予算委で、辻元清美氏(立憲)は首相にただした。「なぜ前夜祭だけ(参加者の)直接(払い)にして、収支報告書に載せていないのか。こんな脱法行為にお墨付きを与えるのか」と訴え、参加者が受け取ったとされる領収書の提出を要求した。

 しかし、首相は「ホテルとの契約主体は参加者個人」「政治資金規正法、公選法上は一切問題ない」と従来の説明を繰り返すばかり。「同じ形式であれば(他の議員がやっても)問題ない」と述べた。

疑問その3「公文書管理」

 桜を見る会には反社会的勢力が招待された疑いもあるが、最大の焦点である招待者名簿について、政府は「ルールに従って廃棄した」との答弁を繰り返している。

 18年の桜を見る会は首相推薦枠を含む「各界功績者(総理大臣等)」が前年より約2000人も増え、自民党総裁選の票固めに使われた疑惑も浮上。なぜ18年4月に「1年保存」だった名簿を「1年未満」としたかについては、「大量の個人情報を含む文書管理が負担となる」(首相)という程度で、説明は尽くされていない。

 招待者名簿を巡り、菅義偉官房長官は1月27日の衆院予算委で、電子データ廃棄記録(ログ)も開示しない理由について「同じシステムを国家安全保障局も利用しており(記録を確認しただけで)国家機密漏えいの危険が増す」と、「国家機密」まで持ち出して廃棄情報の開示を拒んだ。

 同30日の参院予算委で、山添拓氏(共産)は、自民党が昨年1月、7月の参院選の改選議員あてに会の案内状を送り、友人や知人、後援会関係者など4組まで招待できて、「情報公開法に基づき、名簿全体を公開されることもある」と明記していることなどを指摘。「首相事務所も(推薦者は)開示請求の対象となりうると(内閣官房から)伝えられていた。その認識はあるか」と質問した。

 これに対し、首相は「書いていることも『対象とされることもあります』ということで、名簿全体を公開されるっていうことは、これ対象とする、対象だから、対象とされたということだから、そこは違うということだ……」と、しどろもどろになった。「必ずしも公開されるわけではない」という意味なのだろうか。

 山添氏は質問終了後、動画投稿サイト「ユーチューブ」で「首相官邸も名簿が公開されることはありうると十分認識していた。個人情報だから公にできないと言ってきたのは、疑惑を隠すための言い逃れでしかないことが明らかになった」と強調した。

大場伸也

1973年生まれ、2000年入社。船橋、千葉支局、政治部、経済部、長崎支局、小倉報道部を経て現職。政治の記事を中心に執筆しています。野球好き。学生時代にバイトしていた新宿ゴールデン街に出没します。

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