週刊文春デジタル: GoTo〈1.3兆〉ゴリ押し 菅・二階「観光利権」を暴く 受託団体が4200万円献金

GoTo〈1.3兆〉ゴリ押し 菅・二階「観光利権」を暴く 受託団体が4200万円献金

2020-07-22 05:00

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国民の大半が見送るべきというGoToトラベルキャンペーン。安倍官邸と自民党がタッグを組み、ゴリ押しする理由とは何か。そもそもなぜ1・3兆円の血税を注ぎ込むこととなったのか。小誌が取材を進めると、見えてきたのは二人の大物議員による利権の構図だった。
「GoToに関して、延期・中止という選択肢は一切なかった。コロナ対応で失策が続き、世論の反応に敏感になっている安倍官邸ですが、この件については党とタッグを組んでいます。『さらなる感染拡大を招く』と国民の反発が強いなか、それでもゴリ押しする背景には、二大幹部の存在があるのです」
 自民党関係者は苦々しい表情でそう語る。
 安倍政権肝いりの新型コロナ対策が、再び大混乱を巻き起こしている。七月二十二日にスタートの観光需要喚起策「Go To トラベルキャンペーン」。旅行代金の半額相当を国が支援する事業だ。
 感染が再び全国各地に広がる中、七月十七日から十九日にかけて行われた日経新聞・テレビ東京の世論調査では、GoTo実施は「早すぎる」という回答が八〇%に上っている。
 事態が急展開を迎えたのは、実施まで一週間を切った七月十六日のことだ。
「赤羽一嘉国交相が、東京を発着とする旅行をGoToの割引対象から外すことを発表したのです。所管の国交省や観光庁にも知らされておらず、職員は報道をテレビで見て驚いていた」(官邸担当記者)

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存在感の薄い赤羽大臣

 土壇場で決まった“東京外し”。主導したのは、菅義偉官房長官だった。背景にあるのは科学的根拠ではなく「菅氏の『小池潰し』という個人的な理由」(同前)だという。
「(小池氏は)自分で『動くな』と言っているんだから、GoToはやめてもらう。自分の言葉に責任を持ってもらおうじゃないか」
 菅氏は、小池百合子東京都知事への不満を周囲にこうぶちまけたという。
「じつは十五日夜の時点で、官邸内では東京に神奈川、千葉、埼玉を加えた一都三県を除外する案が有力でした。しかし、菅氏が東京だけの除外を強硬に主張したのです」(前出・記者)

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 コロナ禍において菅氏の小池氏に対する怒りは、燻り続けていた。
「菅氏は緊急事態宣言の最中から、『小池が、東京二十三区の感染対策は政府がやるべきだと言っている』などと怒っていた。一方の小池氏は、政府方針に反して他県への移動自粛を呼びかけるなど、政府への挑発的な言動を繰り返した。GoToについても『冷房と暖房を同時にかけるようなもの』と皮肉っていました」(同前)
「なぜ午前中に発表するのか」
 十六日、東京外しが発表される直前には、小池氏は午前中に都内の新規感染者数の見通しを「二百八十台に乗せるだろう」と明らかにしている。
「これにも菅氏は『なぜわざわざ午前中なのか』と不快感を露わにした。昼ニュースに間に合わせるためなのは見え見えで、感染者増を強調しGoToを潰そうとしていると感じたのでしょう」(同前)

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16日午前中に新規感染者数を発表

 一方、除外を免れた神奈川の黒岩祐治知事や千葉県の森田健作知事は、菅氏に近いことで知られている。
「黒岩氏も森田氏も、知事選に初出馬した際から菅氏の強力な後押しを受けた、いわば“子分”なのです。黒岩氏に対して、自民党神奈川県連会長だった菅氏は選挙をバックアップ。森田氏は知事初当選時の〇九年、唯一の公約だったアクアラインの値下げを、菅氏の後押しで実現させてもらった恩があり、この三月中旬にも菅氏と食事しています。
 そんな両知事に、GoToについて菅氏が水面下で意向を聞いたところ、二人とも『外さないでほしい』との返答だった。そのため東京とは異なり、“セーフ”となったのです」(官邸関係者)

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テレビで「GoTo千葉」と発言した森田知事(左) 菅氏と近い黒岩知事(右)

 菅氏の人間関係で決まった東京外し。そもそも新型コロナ対策をめぐっては、当初は今井尚哉首相秘書官ら一部の官邸官僚が取り仕切り、菅氏は蚊帳の外。そのため、一時は安倍晋三首相と菅氏の隙間風が囁かれていた。
「しかし、GoToに関しては、安倍首相は意図的に菅氏に任せている。東京外し発表の数日前から、一部の首相周辺がGoToへの懸念を示していたのですが、安倍首相は『菅ちゃんと話してみる』と言うだけ。いまは菅氏との関係修復に重きを置いているのでしょう」(同前)
 こちらも人間関係を優先し、菅氏の主張する東京外しを了承した安倍首相。「首相にとって、東京外しは国民に安心して旅行してもらうためのメッセージだった」(首相周辺)というが、場当たり的な対応が現場の混乱を招いている。

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「十六日に東京外しの方針を発表した直後、政府は専門家による新型コロナ対策分科会に諮った。結果的に東京外しは了承されるのですが、同時に、GoToから特定の地域を除外するにあたり、何らかの数値基準を設けられないか議論されたそうです。しかし結局、結論は出なかった」(政治部デスク)
 そもそもGoToキャンペーンは、観光支援の「トラベル」に加え、飲食店や商店街支援、イベント支援の四事業で構成される。
「経産省、国交省、農水省の三省にまたがるこの四事業を、当初は経産省が一括して担当することになっていた。仕切ったのは経産省の新原浩朗経済産業政策局長。女優・菊池桃子の夫として有名になった人物です」(経産省関係者)
……… (中略)

「命令に近い形で要望したい」

 そして、GoTo実現に奔走したもう一人の大物が、二階氏だ。
「二階氏は九二年から、『全国旅行業協会』(ANTA)の会長を務めています。ANTAは全国で五千五百社の旅行業者を傘下に収める組織で、そこのトップである二階氏はいわば、“観光族議員”のドン。三月二日にANTAをはじめとする業界関係者が自民党の観光立国調査会で、観光業者の経営支援や観光需要の喚起策などを要望したのですが、これに調査会の最高顧問を務める二階氏が『政府に対して、ほとんど命令に近い形で要望したい』と応じた。ここからGoTo構想が始まった」(別の自民党関係者)

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 じつはこのANTAは、GoTo事業に深く関わっている。
 前述の通り、電通が姿を消した後、観光分野の事務局を受注したのは、「ツーリズム産業共同提案体」なる団体。ここにANTAも名を連ねているのだ。
「共同提案体は、ANTAに加え、日本旅行業協会(JATA)、日本観光振興協会という三つの社団法人と、JTBなど大手旅行会社四社で構成される。さらに『協力団体』である、全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会、日本旅館協会といった宿泊業の関連団体も加えると、全十四団体の組織。委託費は千八百九十五億円です」(同前)
 ANTAとJATAの役員には国交省OBも名を連ねる。また、JATAの総会には毎年、二階氏と菅氏が揃って出席するなど、政官界に太いパイプがあることが窺える。
 さらに、ANTA、JATA、日本観光振興協会の三団体と二階氏の蜜月ぶりを示すのが、海外への「訪問団」事業だ。
 一五年五月、二階氏は三千人規模の大訪中団を結成するが、実行委員会を務めたのが前出の三団体だった。さらに取材を進めると、二階氏が関わった「海外訪問団」の運営に三団体のいずれかが関わったケースは、一五年の中国以外にも計五回あることが分かった。
………….(続きは週刊文春デジタルを御覧ください)
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