[FT]バイデン氏が「武漢ウイルス研説」を蒸し返したわけ

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Financial Times

バイデン米大統領が5月26日に新型コロナウイルスの発生源の解明に向けた追加調査と90日以内の報告を米情報機関に命じた。このため、中国科学院武漢ウイルス研究所からウイルスが流出したという説が再燃している。

中国科学院武漢ウイルス研究所の研究員ら(2017年2月)=AP

バイデン氏は、新型コロナの発生源についての米情報機関の見解が、自然発生と研究所の事故という「2つのシナリオに絞られた」と述べた。

研究施設から漏洩した可能性に信憑(しんぴょう)性があるとバイデン氏が認めたのは初めてだ。トランプ前米大統領が最初に武漢の研究所からの流出説を唱えたときは、陰謀論だといわれて一斉にたたかれた。

なぜバイデン政権は、かつて民主党が一蹴した仮説を公式に検討する気になったのか。現職および前職の米政府当局者は、いくつかの理由を指摘する。

決定的な要因は、トランプ氏がホワイトハウスを去り、前政権に批判的だった人々が以前よりも研究所からの流出説を受け入れるようになったことだ。従来は、感染対策を誤ったトランプ氏が自分への非難をそらすため、中国を悪者に仕立てようとして唱えた説だとみられていた。

バイデン氏が情報機関による調査内容に反応したという指摘もある。同氏はいま、ウイルスの発生源について、何らかの答えを出さないといけないという政治的な圧力にさらされているという。

ウイルスの起源に関する米国務省の調査を率いたデイビッド・アッシャー氏は「バイデン政権は、私たちがトランプ前政権の最後の数カ月で突きつけられたたくさんの衝撃的な証拠を検討し終えたところだ」と述べる。「口があんぐり開くほどの衝撃だ。バイデン政権が言及した通り、さらに多くの事実を見極める必要がある」

バイデン氏が大統領に就任する前、米国務省は武漢ウイルス研に関するファクトシートを発表した。そこには、公式な新型コロナの最初の感染者が確認される前に、複数の研究者が新型コロナに似た症状で体調を崩していたことが記されていた。同研究所が中国軍と共同で秘密の研究をしていたとも書かれていた。

前政権を批判していた人々は、ポンペオ前国務長官が情報機関を政治利用していたとみて、国務省の主張を真剣には受け止めなかった。人々の関心は1月6日の連邦議会議事堂襲撃事件の影響やバイデン氏の大統領就任式に集まっていた。

「私たちはファクトシートが直ちに大きく報じられることはないと思っていた。緊張と騒動が収まったときに人々がこれらの事実に取り組めるように情報を記録に残したかったのだ」と、ファクトシートに関わった前国務省職員のデイビッド・ファイス氏は説明する。

武漢ウイルス研の研究者3人が入院

アッシャー氏は3月、武漢ウイルス研の職員の一部が入院するほど体調が悪化していたと公言した。同研究所の3人の研究者が入院していたという米紙ウォール・ストリート・ジャーナルの最近の報道も加わり、研究所流出説が脚光を浴びた。

今回の議論に詳しい人物はこう見る。趨勢の変化を後押ししたのは、自らの意見が(2020年の)大統領選挙前のトランプ氏に有利に働いたり、流出説を否定した有力な科学者を怒らせたりしないように、科学者らが態度を変えたことだという。

それもあって民主党は流出説を検討する気になったというわけだ。

「最も重要な動きは、著名なウイルス学者が声を上げ始めたことだ」とその人物は指摘する。

著名な18人の学者は学術誌「サイエンス」への書簡で、自然発生と研究所から流出のどちらの仮説も「あり得る」ため、十分なデータがそろうまでは両方とも「真剣に」取り扱うべきだと主張する。世界保健機関(WHO)が中国の協力を得て実施した調査は、これら2つの可能性を均等に考慮してはいないと批判した。

ファイス氏は、この書簡やWHOの調査などの動きについて「政府内でこの問題を扱っていた私たちでさえ、学術界の意見がどれだけ私たちに近いのか、うまく把握しきれなかった。科学者は概して控えめだからだ。だが、ここ数カ月でダムが決壊しつつある」と述べた。

態度を変えたファウチ所長

米国立アレルギー感染症研究所のファウチ所長も態度を変えた。20年、科学的証拠はウイルスが自然界で発生したことを「はっきり示している」と述べていた同氏は、最近になって「確信がない」と態度を変え、追加調査を支持した。

バイデン氏が発したかなり異例の声明は、情報機関の見解をなぞったものにすぎない。だが、不確実な結論を進んで公表したことで研究所流出説に注目が集まった。

米情報機関の元高官、マシュー・バロウズ氏は、このような声明を出した米大統領は記憶にないとし、これまでの大統領は結論を押しつけていると受け取られないように配慮してきたと話す。

「明らかに共和党は、どんな対応であろうと中国に対して弱腰だととらえれば批判しようとするはずだ。だからバイデン氏は、ウイルスが武漢研究所から流出したという事実をめぐって情報関係者の見解が一致すれば(中国への)非難をためらわないという姿勢を示したいのだろう」と、バロウズ氏は述べる。

調査に関する機密を全て解除する法案を提出した共和党のマイケル・ギャラガー下院議員も、バイデン氏は政治的な圧力に応えようとしているとみている。透明性のある調査を受け入れるよう中国に求める声が政権内から出た後は特にそうだという。なお、中国政府が調査を受け入れるとみる専門家はわずかだ。

「バイデン氏は圧力を感じていたはずだ」とギャラガー氏は言う。「相当な反動だとも感じただろう。だが、これは好ましい動きだ」

ある事情通によると、全情報機関から情報を収集・比較する米国家情報会議(NIC)が20年、ウイルスの起源の調査に関して米情報機関を評価し、2通の報告書を作成した。この件に関して米国家情報長官はコメントを避けた。

21年には3つめの機関の報告が加わった。バイデン氏は5月26日、情報機関の全18部局のうち2部局が自然発生説に傾いており、1部局が流出説寄りだと表明した。

バイデン氏は、これらの3部局は結論に関して「低から中程度の確信」しかなく、残りの部局は十分な証拠を持っていないと明かした。この発言で、情報機関に確かな結論を出させるには90日間では足りないのではないかという懸念が持ち上がっている。

米中央情報局(CIA)元高官のポール・ピラー氏はこう述べる。「情報機関全体としては、揺るぎない結論と呼べるものの半分にも達していない。多くの関係機関が『信頼度が低い』判断すらコンセンサスを得られていない事実から言えるのは、確実な何かに達するには程遠いということだ」

By Demetri Sevastopulo

(2021年5月31日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)

(c) The Financial Times Limited 2021. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation.

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