「共産党アレルギー」は言い訳: メディアの堕落

中村文則の書斎のつぶやき

「共産党アレルギー」は言い訳

作家の中村文則さん=自宅で、本人提供拡大
作家の中村文則さん=自宅で、本人提供

日本の野党は大変だと思う。

野党が反対するのは一部のおかしい法案のみで、与党が出す法案の大半に実は賛成している。いい対案も多く出しているが、マスコミはその事実を報じず「野党は批判ばかり」と言う。何だかもう、フェイクニュースである。

しかも日本のマスコミは、自民党の総裁選を衆院選より盛り上げる。立憲民主党の代表選があったが、テレビはほぼ事実上スルーだ。

 面白味(おもしろみ)がない、と言う人もいるが、ではベテランばかり並んだ自民党の総裁選の、あれのどこに面白味があったのだろう。その前の菅前首相の時は「パンケーキが好き」とテレビは必死に取り上げたが、いい年の男性がパンケーキを食べ、一体それの何が面白いのか。マスコミが「盛り上がった」雰囲気をつくっただけだろう。

衆院選での「野党共闘」は、立憲民主党と日本共産党の選挙協力がうまくいった所などで成果を上げ、数字上でも与党を追い詰めていた。与党自らも、自民党を常に支持する媒体も、応援団の論客も、こぞってその選挙協力を必死に批判していたから、つまりそれだけ嫌だったのだろう。

 あの原発事故の時、原発の非常電源の喪失も大惨事に結びついたが、以前からそれらの脆弱(ぜいじゃく)性を国会で取り上げていたのは日本共産党だった(その時に、問題ないとしてはねのけたのは、当時の安倍内閣。でも仕方ない。安倍内閣だから)。そして民主党が与党になり、地震でまさにその非常電源もやられたが、僕が常々思っているのは、あの当時、もっと民主党と日本共産党が意見交換をし合う関係であれば、原発の非常電源なども見直すことができたはず、ということだ。事故の規模はもっと小さかった可能性が高い。事実としてあの時、国にとって日本共産党の力は必要だった。

彼らは国の脆弱な所を指摘する能力に非常に長(た)け、パンデミックが起こる前も、日本の感染症対策の欠陥を国会で取り上げている。彼らとの選挙協力を嫌がる人たちがいるが、日本共産党は野党が政権を取っても「閣外協力」に留(とど)まるとした。協力するが権力はいらないということで、一体これの、何が問題なのだ?

 日本共産党とは、天皇制や自衛隊の考え方が違う、という意見もある。だが彼らはこれらの判断を実は国民の総意に委ねており、彼らの意思より国民の判断を上位に置いている。なぜなら、マルクス・エンゲルスの「共産党宣言」を読んだりするとわかる通り、外国の共産党が間違っているだけで、本来の共産主義は民主主義で、国民主体である。しかも護憲の党だから、諸外国のような共産党にはそもそもなり得ない。マスコミは、さすがに嘘(うそ)を報じるのはよくない。

僕は共産主義には同意しないが、弱い立場の人たちへ目を向ける、日本共産党の多くの政策はまっとうだろう。格差是正で野党は団結すべきで、そうでないともう、日本の貧困層は耐えられない。野党共闘を嫌う理由の「共産党アレルギー」は言い訳で、本当はひそかに与党を利したいのではないか。共産党へのバッシングが何だか急にひどくなったが、昔の日本もヒトラーも、共産党を弾圧するところから全体主義を始めている。歴史は繰り返すのだろう。

 ちなみに、公明党の支持母体は創価学会で仏教がベースのはずだが、自民党の憲法改正案、あの驚愕(きょうがく)の内容はOKなのだろうか。それこそ水と油だと思うけど、一体なぜ一緒に組んでいるのかわからない。

選挙後、いろんなマスコミが「なぜ自民党が勝ったのか」みたいなことを真顔で書いていて、飲んでいたコーヒーを何度も噴き出しそうになった。あなたたちがそういう報道をしているからだろう。日本のマスコミの多くは、ジャーナリズム精神をひそかに捨ててから、もう大分年月がたっている。

立憲民主党の代表が泉健太氏に決まったが、もし自民党の補完勢力になるなら分裂した方がいいと思う。さて、どうなるだろう。


■人物略歴

中村文則(なかむら・ふみのり)氏

1977年愛知県東海市生まれ。福島大卒業後、フリーターに。2005年「土の中の子供」で芥川賞、10年「掏摸<スリ>」で大江健三郎賞など。作品は各国で翻訳され、米国デイビッド・グーティス賞を日本人で初めて受賞。この「書斎のつぶやき」も一部収録した初エッセー集「自由思考」を19年に刊行。今年5月に小説「カード師」を刊行。

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