米国の中西部や南部を襲った竜巻は、各地で多くの犠牲者を出し、深い爪痕を残した。人工衛星から見た被害状況や雲の動きをもとに、「史上最大級の竜巻」(バイデン大統領)がどれほどの猛威をふるったのか、データから探った。

キャンドル工場が壊滅

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ケンタッキー州メイフィールドのキャンドル工場周辺を写した2017年1月28日の衛星画像㊧と竜巻が発生した後の12月11日に撮影された同地区の衛星画像。屋根が消え、建物全体が吹き飛んだように見える。
(©2021 Maxar Technologies・ロイター)

介護施設も襲う

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アーカンソー州モネットの老人ホーム周辺を写した2月22日の衛星画像㊧と12月11日に撮影された同地区の衛星画像。建物の周辺に資材が飛び散っているように見える。
(©2021 Maxar Technologies・ロイター)

屋根が崩れたアマゾン倉庫

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イリノイ州エドワーズビルのアマゾンの倉庫を9月24日に写した衛星画像㊧と12月11日に撮影された衛星画像。屋根半分がえぐり取られたようになくなっている。
(©2021 Maxar Technologies・ロイター)

住宅地の街並み一変

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2017年1月28日に撮影されたケンタッキー州メイフィールドの住宅街㊧と12月11日に撮影された同地区の衛星画像。多くの家が破壊され、街並みが一変した。
(©2021 Maxar Technologies・ロイター)

50以上の竜巻、
9州を吹き抜ける

米国立気象局によると、竜巻は9州にまたがって計50個以上確認された。アーカンソー州からミズーリ州、テネシー州、ケンタッキー州にかけて竜巻の確認された地点が帯状に密集しており、竜巻を生んだ巨大な積乱雲「スーパーセル」がこの地域を北東に移動したことを示すとみられる。北米大陸の中央には、西のロッキー山脈と東のアパラチア山脈の間に「グレートプレーンズ」「プレーリー」といった平原が広がっている。北からの寒気と南の暖気が遮るものなくぶつかって大気が不安定になりやすく、竜巻が多発することから「竜巻街道」とも呼ばれている。

竜巻は南西から北東方向へ

欧州宇宙機関(ESA)が公開している12月11日のケンタッキー州メイフィールドの衛星写真。竜巻は左下のキャンドル工場を破壊した後、右上の市街地へと移動し、更なる被害を及ぼしたとみられる。市街地部分には竜巻が通過した跡にがれきが散乱している様子が写っている

ケンタッキー州メイフィールドでは、キャンドル工場が倒壊するなど、市街地で大きな被害が出た。東京大学の新野宏名誉教授(気象学)よると、竜巻の渦は反時計回りになることが多く、がれきは竜巻の進路の左側に散らばる。メイフィールド市街の衛星写真を見ると、竜巻は南西から北東の方向へ移動した可能性が高いという。米国立気象局によると、ケンタッキー州で確認された竜巻の最大風速は秒速70~90メートルだった。竜巻の強さを示す「改良藤田スケール」(EF0~5)で最大の5に相当するものもあったとみられ、今後、専門家が建物の被害状況などを詳しく調査して判定する。

「スーパーセル」が次々と発生

「トルネードアウトブレークと呼ばれる竜巻の大発生が起きやすい典型的な気象条件になっていた」と東大の新野名誉教授は指摘する。メキシコ湾の海水温が例年より高い状態が続き、米南部を暖かく湿った空気が覆っていた。12月10日夜から11日朝にかけて、北西から寒気が流れ込んで暖気とぶつかり、米南部・中西部で大気が不安定な状態になった。寒気と暖気の境界周辺でスーパーセルが次々と発生し、その下で渦巻き状の上昇気流である竜巻が相次いで生まれた。米国では5~6月に竜巻の発生が最も多く、12月は通常少なくなる。新野名誉教授は「南部の異常な高温が今回のトルネードアウトブレークにつながった」と話している。