ロシア侵略「5つの機密」

ロシア侵略「5つの機密」

2022-04-28 05:00

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節目の対独戦勝記念日が近づく中、現下の戦況は? オリガルヒの謎の死の背景は? ロシア国民の本音とは? 様々な機密に迫る。
ロシア ウクライナ どちらが今、有利なのか
「ロシア軍相手に容赦はしない。プトラー(=プーチン大統領をヒトラーになぞらえた造語)が戦争を始めたのです。彼が最も来てはいけない場所は、私たちのところです」
 小誌にこう語るのは、ウクライナ西部・リヴィウの領土防衛隊「ライオン」で指揮官を務めるヴァレンティン・セレディウク氏だ。
 ロシアの侵略開始から二カ月強が経った。ロシア軍による市民の大量虐殺が指摘され、双方の軍隊にそれぞれ二万人以上の死者が出ていると言われる中、戦況は今、どちらに有利なのか。
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プーチン大統領
 現状を「今後どちらに転んでもおかしくない五分五分の情勢」と分析するのは、軍事ジャーナリストの世良光弘氏だ。プーチン大統領は五月九日の対独戦勝記念日までの東部ドンバス地方制圧を目指しているが、
「キーウなどで疲弊したロシア兵の士気は低く、五月九日までの東部制圧はまず無理でしょう。ただ、ロシア軍が当初の稚拙な戦い方を立て直しつつあるのは事実です。また東部はキーウなどと違って平地が多く、ロシア軍が得意な戦車を使った戦いも展開しやすい。ロシアが今後、多少時間はかかってもドンバスを制圧すれば、次は南部、中部に侵攻し、将来的にドニエプル川の東側はロシア、キーウを含む西側がウクライナとなりかねない」(世良氏)
 一方で冒頭のようにウクライナ側の士気は高い。ゼレンスキー大統領は西側諸国に更なる軍事支援を求め、二十四日に米国の国務長官、国防長官と会談。しかし、問題点もあるという。
「例えば米国が供与する榴弾砲の口径は一五五ミリですが、ウクライナ軍が使っているのは一五二ミリ。システムなども異なり、新たな軍事訓練が必要です。前線での使用には一定の時間がかかる。こうしたタイムラグに耐えられるかどうかが、ウクライナ軍にとっては極めて重要です」(同前)
 ゼレンスキー大統領は「欲しいのは武器」と繰り返しており、そこがまさに焦点だ。元航空自衛官で軍事評論家の潮匡人氏は「米国から供給される新ドローンがゲームチェンジャーになり得る」と語る。
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ゼレンスキー大統領
「ウクライナを支えてきたのがトルコ製ドローン『バイラクタルTB2』などの有効活用です。米国はさらに東部戦線に向け、ウクライナの要請に応じて開発した新ドローン『フェニックスゴースト』の供給を発表。夜間使用や長距離飛行ができるといいます。地上戦は最前列に戦車、次に歩兵、その後ろに榴弾砲というのが普通。米国から供給された榴弾砲はロシア軍の奥の方まで狙えるので、ロシアとしては陣形が取りづらい。さらに空からドローンがくるので、ロシア軍が攻め込むのは相当困難になるのは間違いありません」
 元外交官で内閣官房参与の宮家邦彦氏は「戦争が長引けば長引くほど、西側諸国の支援を受けるウクライナが有利」と指摘する。
「プーチン大統領が勝てばバルト三国やチェコ、スロバキアなどにも侵攻し、力による現状変更を進めるだろうと、NATO側は見ている。それを阻止するためには、ウクライナを何としても勝たせないといけない。ウクライナはNATO加盟国ではないので、直接派兵はできないが、それ以外のことはすべてやる。軍用機の部品なども含め、徐々に、より攻撃的な武器を供与し始めています」
 この武器供与によるウクライナ有利の流れを覆すのが、ロシアによる核兵器の使用だ。冒頭のセレディウク氏は、こう打ち明ける。
「核兵器使用など絶対にあってはならないが、その可能性は五〇%ある。(被ばく予防の)安定ヨウ素剤や核防護マスクはまったく足りていません」
 さらに、前出の潮氏は、もう一つの波乱要因を挙げて「戦局は非常に微妙だ」と見通す。
「大義なき戦争に臨むロシア兵と、自国を守るウクライナ兵の間には、単純な兵力では計れない心理面の差がある。しかし、プーチンがこの先、なかなか戦果を示せなかった場合、堂々と徴兵に踏み切り、大兵力を確保する可能性があります。そうなると、圧倒的な数の前に、ウクライナはどうしても不利になる」
 終わりの見えない戦いが続く。
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オリガルヒが次々に“一家心中”している
「愛国者と反逆者を区別し、口に入り込んだハエのように吐き出すことができる」
 三月十六日、プーチン大統領は粛清を匂わせる強い口調でそう言い放った。
 一カ月半後の今、ロシアのオリガルヒ(新興財閥)たちの不審死が次々と明るみに出始めている。プーチンをその莫大な富で支えてきた彼らの身に、何が――。
 これまでに三人のオリガルヒが、“一家心中”を遂げている。
「一人目は、医療会社メドストムの経営者、ヴァシリー・メリニコフ氏。三月二十三日、自宅で妻と二人の息子とともにナイフで刺されて死亡していた。二人目は、ガスプロムバンク元副社長のヴラジスラフ・アヴァエフ氏です。四月十八日、モスクワ市内の自宅で妻と娘を拳銃で撃って殺害した後に自殺したとされている。使用された拳銃がロシア特殊部隊に供給されるスチェッキンピストルだったため軍の関与を疑う声も上がっています。その翌日には、天然ガス大手ノヴァテク社の元副会長、セルゲイ・プロトセーニャ氏がスペインのリゾート地の別荘で妻と娘とともに死亡。本人は手すりで首を吊り、妻と娘は斧とナイフで殺害されていました」(国際部記者)
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メリニコフ氏
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アヴァエフ氏
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プロトセーニャ氏
 本人だけが死亡した例も三件ある。大手紙のモスクワ支局員が話す。
「一月末から二月末にかけて、ガスプロム・インヴェスト社の輸送サービス部長のレオニード・シュリマン氏とガスプロム連合決済センター副総裁のアレクサンドル・チュリャーコフ氏、石油王のミハイル・ワトフォード氏が自宅で遺体となって発見されています」
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シュリマン氏
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チュリャーコフ氏
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ワトフォード氏
 不審死を遂げたオリガルヒは少なくともすでに六人。拓殖大学教授の名越健郎氏が語る。
「プーチンはこれまでオリガルヒに対し、『欧米に豪華別荘を買うのは構わないが、心が欧米に移るのは裏切り者である』と警告してきました。アヴァエフ氏とプロトセーニャ氏は家庭内に問題があったとも報じられていますが、この流れでは他殺も疑わざるを得ない」
 筑波学院大学教授の中村逸郎氏が読み解く。
「亡くなったのは、いずれもプーチンの秘密を知る人です。半国営の天然ガス独占企業であるガスプロムの三人は、会社の会計部門に関係しており、政権の汚職の実態を知っている。医療関係者は、コロナワクチンでの欧米とロシアの裏取引を知る存在。家族ごと殺すことで情報を漏らさせないよう意図したのではないかと思われます」
 侵攻開始から二カ月。プーチンは今、反戦世論の抑え込みに躍起になっている。
「オリガルヒの所有する企業はいずれも規模が大きく、従業員が五万人程いる。彼らが反戦に回り、五月一日のメーデーの際に大規模デモを起こすことをプーチンは絶対に避けたい。五月九日の戦勝記念日に戦果を誇る前に、その前段としてオリガルヒを締めつけているのではないか」(同前)
 実際、アルミ王のオレグ・デリパスカ氏など、侵攻に否定的なオリガルヒが出始めている。中村氏に警戒すべき人物を尋ねると「比較的脇が甘い人が危ない」としながら、ある意外な人物の名前を挙げる。
「ウクライナ最大のオリガルヒ、リナト・アフメトフ氏です。『ドネツクの鉄鋼・石炭王』の異名を持ち、マリウポリに大規模製鉄所を二つ保有。そのひとつが、現在猛攻を受け約二千人が地下シェルターに避難しているアゾフスタリ製鉄所です。石炭に精通し、ロシア石炭業界の育成・発展にも寄与してきた。年間数十億ドルの石炭をロシアに輸出するなどして、ウクライナ人でありながらプーチンの信頼を得ました。昨年十一月には、ウクライナの『反オリガルヒ法』に反発してゼレンスキー政権の転覆を目論んだとされています」
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石炭王のアフメトフ氏
 プーチンに近いアフメトフ氏が何故危ういのか。
「自身の資産を守るため、ギリギリまで侵攻阻止を画策していたようです。しかし決裂し、ロシアが侵攻を開始する一週間前にプライベート機でスイス・チューリッヒへ逃亡。所有する製鉄所も攻撃され、資産を約九十五億ドル失ったとの報道が出ています。四月十五日にはロシア支配下での自身の製鉄所の操業停止を明言し、翌日にはウクライナ戦勝後のマリウポリの復興支援を約束するなど、プーチンとの完全決別を宣言しました」(同前)
 プーチンの暴挙に翻弄されるオリガルヒたち。全世界に約二百人いるという彼らの命運やいかに。
ロシア 1000人にメールして返ってきた13通の中身
「実はこのメッセージを書くのさえ怖いのです。警察に読まれたらどうしようかと。私は自分の立場を堂々と表明することができません。(ジョージ・オーウェルの)『1984』はもはや空想ではなく、現実の話に思えます」(三十代、男性)
 ロシアの市民から小誌に寄せられた貴重な“肉声”だ。
 ウクライナ侵攻後、厳しい言論統制が敷かれているロシア。当局が「虚偽」とみなす情報を発信した者に最長十五年の禁錮刑を科す法案が可決されたことを受けて、日本を含む多くの海外メディアがロシアでの取材活動を停止した。そんな中、小誌はロシア人の本音を探るべくメール取材を試みた。利用したのはポーランドのプログラマー集団「スクワッド303」が侵攻を機に開発したウェブサイト「1920.in」。ここにアクセスすると、ロシアで使用されている約一億四千万件のメールアドレスが一件ずつ無作為に表示され、情報を閉ざされたロシア国民に全世界から直接メールを送ることができる。
 小誌取材班は「プーチンの戦争指揮をどう思うか」「ロシア軍の戦争犯罪について」「核兵器の使用について」などの質問をロシア語で用意し、四月下旬から連日メールを送信。千通が返送されることなく届けられ、二十代~六十代の男女十二人と、個人情報を伏せた一人の計十三人から回答を得た。
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ロシアからのメール
 まず、プーチンの戦争指揮については「おぞましいこと」(六十代、男性)、「完全な失敗」(三十代、男性)などと九人が否定的な評価をし、残りは評価を避けた。バルト海に面したカリーニングラードに住む男性(五十代)は、「犯罪者がこの国の権力を掌握してきたのです。この戦争に勝者はいない」と断言した。
 目下の戦況についても、「ロシア軍は完敗に近い。士気が低く、武装も不十分だ」(三十代、男性)、「すでにロシアはこの戦争に負けている。政治的、軍事的な目的を達成することはできない」(三十代、男性)などの批判が並ぶ。
 一方、モスクワに住む四十代の女性は「ロシアが勝つまでは戦いを続けるべき」と、明確にプーチンを支持。また別の四十代女性は、「私は国を愛しているので、現時点では戦争に反対できません。誰が正しかったかは歴史が証明します。私たちが勝って生き残るか、米国が私たちを貪り食うか、です」と訴えた。
「ロシアでは自由に発言できるか」との問いには、ほとんどが「できない」と答えたが、興味深かったのは前出のカリーニングラードの男性だ。
「慎重にすれば比較的自由に発言できます。警察やFSB(連邦保安庁)は腐敗しており、効果的に機能していませんから」
 意見が完全に一致した質問が二つある。「ロシアは核兵器を使うと思うか」とする設問には全員が「ありえない」「断じて許されない」などと回答した。もう一つ、侵攻後の暮らしについても、全員が「物価の上昇」への不満を吐露した。南部スタヴロポリに住む男性は「戦争を支持する多くのロシア人は、貧しくて国産品しか買うことができない」と指摘。モスクワの男性は「物価がひどく上がっているのに給料が少ない。このままではここにいる意味がない。ロシアを出て自分の会社を作りたい」と嘆く。物価はモノによって二〇~五〇%上がり、中には二倍近くになったものもあるという。
 個人情報を伏せた一人は質問には答えずこう送ってきた。女性のようだ。
「私は自分の人生や仕事、家族や友人の命が心配なので質問に答えることはできません。私の愛する人は現在、契約兵士として戦地にいますが、彼が自分の意志でそこにいるのではないと断言できます。兵士たちは『断れば懲役刑だ、二度と仕事に就けない』と脅され、訓練に行くと騙されてウクライナに連れて行かれたのです。残る希望は、他の国々が私たちロシア国民を支援し、現在の状況の責任者全員を排除してくださることです(ウクライナの惨状について誰が責任を負うべきか、皆理解しています)」
 個人の特定を防ぐため、各々のコメントに職業を記すことは避けたが、回答者はデザイナー、プログラマー、学者、エンジニア、弁護士などで、文面からは職業人の誇りが感じられた。三十代から四十代が多く、まさに働き盛りでロシア社会の中核だ。このアンケート結果を見た筑波学院大学の中村逸郎教授は、「比較的教養の高い人たちは、国内メディアには正確な報道がないことを知っていて、自ら様々な情報網にアクセスしている。国営テレビでプロパガンダを見るしかない親世代とそうではない現役世代など、ロシア国内の分断が戦争を機に益々進んでいる印象を受けた」と語る。
“プーチンの戦争”を憎む人々は、ロシアにも確かに存在するのだ。
(以下省略:「週刊文春でお読みください)

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