なぜプーチン政権の危険性は軽視されてきたのか―国際情勢分析と認知バイアス―宇山 智彦

皆さん

杉原浩司です。お疲れ様です。(重複ご容赦)

私にとってはとても説得力があり、共感するところの多い論考でした。
多くの方が読まれることを期待します。

なぜプーチン政権の危険性は軽視されてきたのか
―国際情勢分析と認知バイアス―
宇山 智彦(北海道大学スラブ・ユーラシア研究センター)
https://src-h.slav.hokudai.ac.jp/center/essay/PDF/20220413.pdf

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(以下上記引用本文)
スラブ・ユーラシア研究センター ロシアのウクライナ侵攻特集
なぜプーチン政権の危険性は軽視されてきたのか
―国際情勢分析と認知バイアス―
宇山 智彦
(北海道大学スラブ・ユーラシア研究センター)
1.後知恵論を超えて:2014 年に認識できたはずのこと
私は大学院の修士課程に在学していた時にソ連崩壊を経験し、世間の人々が、なぜソ連研
究者はソ連崩壊を予見できなかったのかと批判するのを耳にした。2022 年 2 月 24 日に始ま
ったロシアによるウクライナ侵攻に関しても、多くの研究者は予見できていなかった、誰々
は予見していたといった話を聞く。前年からロシア軍のウクライナ国境への集結が続いてい
たにもかかわらず、それが本格的な侵攻に至るとは多くの研究者が思っていなかったことは
事実である。私自身は、プーチン政権は軍事力の行使を選択肢の一つとしていると考え、特
に米欧で侵攻開始予定日と言われていた 2 月 16 日が過ぎてから急速に、ロシアおよびドネツ
ク、ルガンスク両人民共和国で臨戦的な雰囲気を煽るプロパガンダが増えたのを見て、いよ
いよ本格的な開戦準備が始まったのだろうと思っていた。しかし、まずドンバスで両人民共
和国とウクライナ軍の戦闘が激化するよう仕組んでからロシア軍が介入すると思っていたの
で、ドンバスの紛争状況に大きな変化がないまま侵攻が始まり、しかもそれがドンバス以外
のウクライナ各地に大規模に及んだことは、予想外であった。
もちろん、予想できたはずだというのは後知恵に過ぎない。ソ連崩壊にしてもウクライナ
侵攻にしても、予想していたと主張する研究者や評論家の多くは、いろいろ極端なことを言
っていた中で、その一つがたまたま当たったというだけである。侵攻が起こることに関して
は、機密情報に基づくアメリカ政府などの分析が正しかったことが示されたが、それでも予
想できていなかった点は多いようだし、研究者がアクセスできる公開情報で早い段階から侵
攻を予測できたかと言えば、今から考えてもやはり難しかったと言わざるを得ない。
ただ、プーチン政権が状況次第でこのような侵略を行いかねない危険な政権であることは、
もっと早くから認識されるべきだったと私は考える。プーチンはそもそも、血で血を洗う第
2 次チェチェン戦争での勝利によって権力を確立し、政敵やジャーナリストに対して殺害を
含む弾圧を繰り返してきた政治家である。対外政策は当初は協調的だったが、2000 年代後半
から徐々に米欧や旧ソ連地域の親欧米諸国への対決姿勢を強め、2014 年のクリミア併合と、
ドンバスでの紛争の煽動に至った。クリミア併合はほぼ無血で行われたとはいえ、核大国の
力を背景とした侵略・領土奪取という前例のない行為は、国家主権と領土不可侵に基づく国
際秩序を破壊するものである。平和だったドンバスに武力紛争を起こさせたことと合わせ、
極めて危険なことをロシアがしているのは明白であるはずだった。
しかし当時、日本ではクリミア併合とドンバス紛争は、それらのきっかけとなったウクラ
イナでの政変(マイダン革命)と合わせて「ウクライナ危機」と呼ばれ、これらがウクライナ
2
以上にロシアの問題であるということがあまり認識されていなかった。ロシア研究者の中に
は、クリミア併合を支持しないと言いつつ、ロシアの主張にも理解を示す人が多かった。特
に、クリミアやドンバスについては、ロシアとの関係の深さを強調したり、現地の親ロシア
的な人々に共感したりして、ロシア側の見解に似た解説をする研究者たちがいた。ウクライ
ナに注目が集まってこの国に関する研究・解説が増えたのはよいことではあったが、ウクラ
イナの政治的・経済的な混乱・腐敗が語られることによって、クリミアやドンバスでの諸事
件についてもウクライナの方に問題があるかのような印象が生まれがちだった。
他方、ロシアの脅威を常に強調してきた論者たちは当然、クリミア併合とドンバス紛争に
ついてもロシアを批判したが、この人々は逆に、これらの事件が示すロシアの変化を十分に
認識しない傾向があった。私はロシア側の主張は全て不当であること、ただしロシアがこれ
まで常に外国に対して不当な行為をしてきたわけではなく、2014 年のウクライナ介入はロシ
アの変質を示すからこそ危険であることを指摘したが 1
、耳を傾けてくれる人は少なかった。
さらに、クリミア併合のほとぼりが少し冷めると、日本政府はプーチンとの妥協成立に期待
して北方領土と平和条約に関する交渉を加速させようとするという、失敗を運命づけられた
不思議な政策を取ったため、プーチン政権の危険性を指摘する声はますますかき消されるよ
うになった。
2022 年のウクライナ侵攻に関しては、ほとんどのロシア研究者がロシア(プーチン政権)
批判で一致しているが、それでもロシアに若干の理解を示す人々もいる。そして非専門家の
中には、ウクライナの挑発で戦争が起きたとか、アメリカが全部悪いと主張する人々が、少
数ながら無視できない勢力として存在する。プーチン政権が世界の平和と秩序を脅かす行動
を繰り返しているにもかかわらず、認識がなかなか追いついていかないのはなぜなのか。ロ
シア政府と関係があって、意図的にプロパガンダに加担している人々もいるだろうが、恐ら
く大半の人々は、特段の利害関係や悪意があるわけではないのに、結果的に侵略者に甘い見
方を取ってしまっているのだろう。それはなぜなのかを、本稿では認知バイアスという観点
から考えてみたい。認知バイアスとは認知心理学の用語で、先入観や直観によって生じる、
情報処理や分析の偏りを意味する 2
。ただし筆者は認知心理学の専門知識を持っているわけで
はなく、認知バイアスやそれに関連する用語を、緩やかな意味で使っている。今後、より専
門的な観点から、国際情勢分析や地域研究における認知バイアスに関する研究が進むことを
望みたい。
2.正常性バイアス:なぜ情勢の変化に認識が追い付かないか
正常性バイアスとは、異常な事態が起きてもその危険性を過小評価する傾向のことであり、
1 最もまとまった形のものとしては、宇山智彦「変質するロシアがユーラシアに広げる不安:進
化する権威主義、迷走する「帝国」」『現代思想』2014 年 7 月号、129–143 頁。
2 認知バイアスについては、たとえば以下を参照。一川誠『ヒューマンエラーの心理学』ちくま
新書、2019 年、第 5 章。情報文化研究所『情報を正しく選択するための認知バイアス事典』フ
ォレスト出版、2019 年。
3
クリミア併合の際に日本の多くのロシア観察者にはまさにこのバイアスが存在したと思われ
る。プーチン時代のロシアは、民主主義や人権の観点からは早くから多くの問題を抱えてい
たが、エリツィン時代に比べ政治体制も社会も安定してきたことは多くの観察者が評価して
いたし、プーチンには冷徹で実利主義的な政治家というイメージがあった(実際には感情的
な面も早くから見られたのだが)。そのため、クリミア併合やドンバスでの紛争煽動という異
常な事態が起きても、それまでの認識の延長線上で事態を理解できるよう、両地域とロシア
のつながりの深さや、ウクライナ側の問題に注意を向けて、ロシアの行動を少しでも正常な
ものとしてとらえようとしたと思われる。今年、私が国境でのロシア軍の動きよりも過去の
例を重視し、ドンバスでの紛争が激化しない限りロシアは軍事侵攻しないだろうと考えたの
も、一種の正常性バイアスであろう。
他者の行為に関する正常性バイアスは、自分と関わりが深く、何らかの意味で好意の対象
である人や集団については、感情移入によって特に深刻になる。地域研究や国際交流に携わ
る人は、相手国に好意を持っていることが少なくないから、正常性バイアスに陥る危険によ
く気を付ける必要がある。私自身、狭い意味での専門は中央アジア研究だが、ロシアも研究
対象であり、しばしばロシア語で考えごとをするほどロシア語・ロシア文化に深く馴染んで
いるので、ロシアへの偏見を示すような意見を聞けば不快になる。しかし研究対象国の否定
的な側面や悪い方向の変化に目をつぶれば、地域研究の信用を落とすことになるということ
を、常に意識しなければならないと考えている。
地域研究者にとってもう一つ切実な問題は、研究対象国の政府に目を付けられて現地調査
ができなくなる可能性があるということであり、そのことを心配して、その国の政策に理解
を示したり、沈黙したりする人も少なくない。研究対象国の状況を公正に分析し、否定的な
面についても発言する必要性と、現地調査による研究が続けられなくなる可能性をどう天秤
にかけるか、簡単に答えは出ない。しかし現在、多くのロシア研究者が覚悟を決めて侵略を
批判していることは、地域研究者のあるべき姿を示しているのではないだろうか。
3.合理化バイアス:ロシアの行動は安全保障で説明できるのか
心理学で「合理化」という言葉は多くの場合、自分の行動について都合のよい言い訳を考
え出すことを指すようであり、ロシアの自己正当化はその意味での合理化と呼べる部分が多
い。しかしここでは定義を少し変えて、他者の行動を一見合理主義的に解釈しようとして誤
りを起こすという問題を指して使うことにする。具体的には、ロシアの行動を純粋に安全保
障の観点で説明しようとする誤謬について述べたい。
国家は自らの安全のために行動するという合理主義的な前提に立てば、NATO(北大西洋条
約機構)の東方拡大はロシアにとって安全保障上の脅威であり、ロシアは隣国ウクライナの
NATO 加盟を何としてでも止めるためにクリミアを併合し、さらには軍事作戦を開始したの
だという説明は、一見もっともらしく見え、多くの人が採用している。しかしよく考えれば、
この説明にはおかしな点が見つかる。まず、ウクライナの加盟について NATO 側は、ブッシ
4
ュ政権期のアメリカが一時的に積極的だったことなどを除けば概ね消極的であり、特に近年、
加盟の見通しはますます遠のいた状態であった。
また、2004 年のバルト三国の NATO 加盟により、NATO の領域はサンクトペテルブルグか
ら 130 キロのエストニア国境まで広がったが、それによりロシアにとって具体的な危険な状
態が発生したという事実はない。NATO はロシアに配慮して新規加盟国への戦力配備を抑制
し、ロシア自身とも、1994 年に開始された平和のためのパートナーシップ・プログラムや、
2002 年に設立された NATO ロシア理事会を通じて協力関係を築いた。しかし 2014 年のロシ
アによるクリミア併合とドンバス介入の結果、NATO とロシアの協力関係は一部を除いて停
止し、中東欧の NATO 加盟諸国はロシアを警戒して軍備を増強した。そして 2022 年のウクラ
イナ侵攻が始まると、NATO 加盟諸国は直接軍事行動には参加しないものの、ウクライナに
対し大量の武器供給を含めロシアと戦うための援助を行っている。ロシア西方の安全保障環
境を著しく悪化させてきたのはロシア自身である。
ロシアがバルト諸国の NATO 加盟を多少の不快感は示しつつも受け入れたのに対し、ウク
ライナの NATO 加盟については実現の見通しが立っていないにもかかわらず繰り返し激しい
苛立ちを示し、侵攻にまで至ったのは、歴史的に一体だとロシア側が一方的に考えるウクラ
イナが米欧側に付くことへの怒りのためである 3
。また、超大国ソ連の崩壊を「惨事」と呼ぶ
プーチンにとって、ウクライナを領土ないし勢力圏の中に取り込むことは、超大国復活の重
要な一歩となりうる。つまりウクライナの NATO 加盟問題は、ロシアの安全保障ではなく縄
張り意識・帝国意識の問題なのである。
NATO の東方拡大を安全保障の問題として切実に考えてきたのは、ロシアの脅威を感じる
加盟希望国の方である。ロシアとしては本来、帝国意識から脱却して、他の旧ソ連・東欧諸
国の独立性を尊重しながら良好な関係を築く方が、自国の安全にも資するはずだった。現実
には、自国指導部の判断でソ連を解体したはずのロシア国内で超大国復活願望が次第に強く
なり、プーチン政権もそれを煽り立てた。確かに、米欧諸国がロシアの縄張り意識・帝国意
識の根深さ・扱いにくさを十分認識していたのか、それを考慮したうえでロシアに対する最
適な政策をとれていたのかは、検討する余地があろう。しかし、ロシアの脅威を感じる国々
を放置して NATO 拡大を差し控えるべきだったなどという結論は成り立たないはずである。
ロシアのウクライナに対する攻撃的な態度が通常の意味での安全保障上の考慮によるもの
ではないことは、プーチンらロシア指導部のウクライナへの執着や米欧への一方的な怨念に
満ちた発言、および NATO 脅威論とロシアの実際の行動の矛盾を丁寧に分析すれば、すぐに
分かることであった。国際政治は必ずしも客観的な合理性で動いているわけではなく、国家
の威信や指導者の感情(特に執念や怨念)で動く場合が少なくないということは、クリミア
併合やウクライナ侵攻が研究者に与える教訓である。
3 2021 年 7 月のプーチン論説「ロシア人とウクライナ人の歴史的一体性について」、および 2022
年 2 月のドネツク、ルガンスク両人民共和国の独立承認の際のプーチン演説を参照。Статья
Владимира Путина «Об историческом единстве русских и украинцев». 12.7.2021
<http://kremlin.ru/events/president/news/66181&gt;; Обращение Президента Российской Федерации.
21.02.2022 <http://www.kremlin.ru/events/president/news/67828&gt;.
5
4.確証バイアス:陰謀論と両成敗主義
確証バイアスとは、自分の考えに合う情報のみを集めることによって形成・強化された信
念が、たとえ不都合な情報に接しても修正されにくいという現象を指す。このバイアスによ
って支えられるものとして顕著なのが陰謀論である。プーチン政権下のロシアでは、米欧が
世界を支配するためにさまざまな国の政権を倒そうとし、特にロシアの力を弱めようとして
いる、ウクライナもそのために利用されており、ウクライナで紛争が起きるとすれば米欧の
せいだという陰謀論が時間をかけて形成・流布され、そのレンズを通さなければ国際情勢を
見ることのできない人が増えている。日本にもアメリカ陰謀論者やユダヤ陰謀論者などが根
強く存在し、誤りを指摘されても、それを指摘する人の方がアメリカなどに洗脳されている
のだとしてさらに信念を凝り固まらせる。
陰謀論は、それを信じない人には容易に誤りを見破れるものだが、より多くの人に受け入
れられる厄介な確証バイアスは、対立が起きている時には両方に程度の差はあれ必ず非があ
るものだという信念である。「どっちもどっち」、「喧嘩両成敗」という観念をかなり多くの人
が持っており、ロシアのやっていることは悪いにしても、ウクライナや米欧にも非があるは
ずだと考えて、粗探しをすることになる。ウクライナには確かに多くの問題があるが、それ
らは内政問題であり、ロシアによる介入・侵略を正当化するものでは全くない。また、ドネ
ツク人民共和国軍をドローンで攻撃したウクライナの挑発のせいでロシアとの戦争が始まっ
たのだという説がまことしやかに流されているが、実際には人民共和国側もドローンを使っ
ているというだけでなく、近年の紛争では残念ながら普通に見られるドローンの使用と、多
数の平和な市民に襲いかかり諸都市を破壊する侵攻では全く釣り合いが取れない。NATO の
拡大がロシアの安全を脅かしたからロシアが反撃したという説明が成り立たないことは、前
の節で見た通りである。このように、論理的なつながりや釣り合いを欠いた話でありながら、
ウクライナや米欧の非を言い立ててロシアの責任を相対化させるような議論が実に多い。
特に残念なのは、リベラル知識人とされる日本人の一部が、「どっちもどっち」論や、ロシ
ア以上に米欧が悪いという見方を唱えていることである。米欧の不正義を長年考え続けてき
たこの人たちは、世界のさまざまな問題の根源は米欧にあるという考え方に慣れ、それに一
見合うかのような情報を集めたがるのだろう。確かに、米欧がアフガニスタン、イラクなど
で行ってきた軍事介入には、道義的に許されるべきでない面が多く、国際秩序にも禍根を残
している。しかし、ロシアのウクライナ侵攻は、特定の政権やその行為に向けられた米欧の
軍事介入と異なり、実質的な領土拡張や相手国の恒久的な属国化を狙っているという意味で
より悪質である。また、米欧では政権によって方針が違い、極端な介入政策は長続きしない
のに対し、長年積み重ねてきた超大国復活の執念に基づくロシアの侵略行為は繰り返されう
るものであり、より厄介である。私自身、民主主義や人権に関してリベラルな価値観を支持
し、米欧中心主義を常に批判してきたが、アメリカの大国主義・自己中心主義を批判するの
であればロシアのそれも批判するのが当然だと考える。米欧に対抗する国の大国主義を多少
6
なりとも免罪し、中小国の苦しみを軽視するのは、リベラルな価値観と完全に矛盾する。
5.ウクライナ侵攻の教訓:プーチン政権の危険性にも米欧中心主義にも警戒を
以上、プーチン政権の危険性の軽視をもたらしてきた認知バイアスを概観した。言うまで
もなくこれは、自分以外の研究者・論者を批判することを目的としたものではない。ロシア
研究はこれから、現地調査もロシアの研究機関との交流も困難になることが予想される中で、
新しい視角と方法論によって研究水準を維持・向上させていくという課題に直面しているが、
その際に重要なことの一つが、認知バイアスの問題をよく認識することだと考えて、私はこ
の小文を執筆した。
ウクライナ侵攻から得られる一つの重要な教訓は、安全保障などの一般論からある国家の
行動を演繹的に解釈するのではなく、国家指導者らの発言や政権の具体的な行動を、その極
端な部分も軽視せずに分析する必要があるということである。プーチンは早くも 2008 年、ウ
クライナとサカルトヴェロ(ジョージア)を NATO 加盟候補国にするか否かを話し合った
NATO ブカレスト・サミットの際に、アメリカのブッシュ大統領に対し、「ウクライナは国家
でさえない」と言い、ウクライナを NATO に迎え入れればこの国は存在しなくなると脅した
という 4
。私は 2014 年にもクリミア併合・ドンバス介入の背景を説明するためにこの発言を
引用したが、今読み返すと、ウクライナの国家としての正統性を否定し、この国を併合ない
し解体しようという考えにプーチンが長年取り憑かれてきたことが改めて確認でき、慄然と
する。ロシアの政治家の極端な発言はともすれば話のネタとして消費されがちだが、それら
の内容が全て実行されるわけではないにせよ、それらの背後にある発想の危険性はもっと深
刻にとらえるべきだろう。
他方で心配なのは、ロシアによる侵略に米欧日が団結して対抗するのは当然だとしても、
それによって米欧中心主義が再び強まってしまわないかということである。ロシアの米欧に
対する不満は、ロシアが世界において特別な権利を持つべきなのに持たせてくれないという
身勝手なものであるが、世界には米欧から軍事介入や差別を受けてきたことに不満を持つ
国々や人々が少なからず存在し、そのことが国際秩序の不安定要因ともなってきた。米欧や
日本は常に正しく善であるというのもまた確証バイアスである。米欧への批判的な目を、ロ
シアの正当化のためではなく、中小国の権利と安全がよりよく保障される国際秩序の構築の
ために使っていきたいものである。
(2022 年 4 月 13 日)
*本稿はすべて個人の見解であり、所属大学、組織などの立場を反映したものではない。
4 Блок НАТО разошелся на блокпакеты // Коммерсантъ. 07.04.2008
<http://www.kommersant.ru/doc/877224&gt;.
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