統一教会の自民党工作をスッパ抜く!

《総力取材 統一教会の闇》自民党工作をスッパ抜く!

2022-07-28 05:00

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霊感商法で批判を浴びてきた統一教会。だがある時期から、自民党への接近を加速させていった。時の文科相、元首相秘書官、清和会のトップ。そして彼らもまた、統一教会から支援を受け、その活動に“お墨付き”を――。
●日本の教団トップ「数多くの議員を教育した」
●下村元文科相“支援者名簿”に関連団体幹部5人が
●統一教会が本気で応援した国会議員リスト
●安倍桜を見る会関連団体幹部が4回連続招待
●文鮮明の傲慢語録「皇太子に女を紹介してやろう」
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田中富広会長の記者会見
 二〇一五年十月十二日、千葉・幕張には一万人を超える信者が集まっていた。
 全世界の信者に向けてオンラインでも発信されたこの日のイベント。まずは学生たちのパフォーマンスや合唱で開幕した。続けて日本の統一教会(現・世界平和統一家庭連合)を率いる宋龍天総会長(当時)ら最高幹部が登壇。信者たちに激励の言葉を掛けていく。
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世界平和統一家庭連合のHP
 さらに、一二年に亡くなった創始者・文鮮明氏の五女・文善進世界会長(同)は基調講演で、こんなメッセージを送っていた。
「世界中の子供たちを天の父母様のもとに帰すという真の父母様のビジョンを果たしていきましょう」
 日韓の最高幹部が勢揃いしたこのイベントの名前は、「出帆記念大会」。統一教会の悲願だった「世界平和統一家庭連合」への名称変更が認証されたことを、盛大に祝う大会だった――。
 山上徹也容疑者が安倍晋三元首相を銃撃した動機として供述したことで、クローズアップされた統一教会と自民党との距離。文鮮明氏が、安倍氏の祖父・岸信介元首相と関係を築いて以来、教団は自民党の政治家に接近を図ってきた。軌を一にするように日本での勢力を拡大させ、一九九二年には歌手の桜田淳子らが合同結婚式に参加している。
 この頃、自らを地上に再臨した救世主と位置付ける文氏は“傲慢”な発言を重ねるようになっていた。中曽根康弘元首相については、「中曽根なんか吹けば飛んだよ」(「統一世界」九〇年四月号)。折しも、独身だった皇太子(現天皇)の結婚の行方が注目されていた時期でもあったが、
「皇室に(入る)女たちがいなくて、いま大変です。そこで私が紹介してやろうと考えているのです」(「統一世界」九二年三月号)
 と口にしていたという。
 だが、首相や皇室をも操ろうとしてきた統一教会に影が落ちる。霊感商法が各地で訴訟沙汰になっていくのだ。彼らに衝撃を与える判決が下ったのは、〇九年十一月。折しも民主党への政権交代直後のことだった。
関連団体のために議員会館を
「統一教会系の印鑑販売会社『新世』の社長らが、特定商取引法違反の罪で起訴された裁判です。社長には懲役二年(執行猶予四年)の有罪判決が言い渡されました。さらに裁判長は『相当高度な組織性が認められる継続的犯行』と断じ、初めて霊感商法と統一教会の関係性を認定したのです。それまで統一教会は『霊感商法とは無関係』のスタンスを貫いていただけに、司法の認定は大きな意義を持ちました」(社会部デスク)
 全国霊感商法対策弁護士連絡会の渡辺博弁護士も、七月十二日に行われた会見でこう述べていた。
「後に統一教会の機関誌で、教団の責任者が『政治家との絆が弱かったから、警察の摘発を受けた。今後は政治家と一生懸命つながっていかないと』と語ったことが彼らの反省点でした」
 この有罪判決を契機にして、統一教会の「自民党工作」は再加速していく。教団との関係を巡っては様々な国会議員の名前が報じられているが、“本気で”応援してきたのは誰なのか。
「統一教会は反共主義を掲げてきたこともあり、保守系が多い清和会への支援が目立つ。その筆頭格と言えるのが、井上義行参院議員です」(教団関係者)
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賛同会員の井上氏(同氏のYouTubeより)
 井上氏は第一次安倍政権の首相秘書官で、今夏の参院選に全国比例で出馬。七月六日に教団の集会に参加した際、「投票用紙の二枚目は井上義行~!」と会場が絶叫する音声が報じられた。小誌の取材には、参院選で統一教会の支援を受けたことや、賛同会員になったことなどを認めている。
「井上氏は三年前の参院選で落選したから、今回、安倍さんに泣きついた。安倍さんは井上氏に優先的に統一教会の票を回していたとされます」(自民党幹部)
 同じく清和会の上野通子参院議員。文科政務官(一三年九月~一四年九月)や文科副大臣(一九年九月~二〇年九月)を歴任してきた。いずれの時も、宗教法人を所管する文化庁を担当している。それだけに「統一教会にとっても重要視する議員だった」(前出・教団関係者)という。
 他方、上野氏も統一教会の関連団体に便宜を図ってきた。ジャーナリスト・鈴木エイト氏の調査によれば、上野氏は二度目の当選直後だった一六年九月、議員会館の会議室を世界戦略総合研究所のために借りていたことが明らかになっている。後述するが、同研究所は統一教会の関連団体だ。
 税金で運営されている議員会館。国会議員しか借りることができない一方、衆院事務局は会議室の利用は議員が主催する会合及び行事等に限るとしている。
 統一教会の関連団体のために議員会館を借りたことは適切なのか。教団からの選挙支援の有無も含め、上野氏に見解を尋ねたが、期日までに回答は無かった。
 統一教会による「自民党工作」。実は、日本の教団を率いる宋龍天総会長が一七年の講演で、そのスキームを自ら明かしている。
理事に名を連ねた萩生田氏
〈後援会の結成を通じて多くの議員を支援し、これを通して統一運動を紹介する二時間ブリーフィング、統一原理の二日セミナー、四日セミナーなどで数多くの議員を教育しました〉(「世界家庭」一七年三月号)
 実際、統一教会側に後援会を作ってもらったことを告白した議員が、滋賀県選出の小鑓隆史参院議員(宏池会)だ。初当選から二年後の一八年五月、ツイッターでこう報告していた。
〈世界平和連合の皆さんが隆和会という後援組織を立ち上げて頂きました。応援歌まで作って下さり感謝〉
 改選だった今夏の参院選直前の六月七日には、隆和会の国政報告会の様子をツイートした小鑓氏。結果、二度目の当選を果たしている。小鑓氏に支援を受けた経緯を尋ねたところ、
「お相手があることですので、個別のお問い合わせには回答を控えさせて頂いております」
 統一教会の関連団体に要職として名を連ねていた“現職閣僚”が、萩生田光一経産相(清和会)だ。一般社団法人「教育問題国民会議」の登記簿によれば、落選中だった一二年六月まで理事を務めていた。
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安倍氏最側近だった萩生田氏
 国民会議とは、どんな社団法人なのか。事務局長は「国際勝共連合」で活動している女性。萩生田氏を除く七名の理事のうち、四名が統一教会系メディア「世界日報」への登場歴があった。また、監事の古坊知生氏は現職の豊島区議だが、
「もともと元衆院議員の小林興起氏の秘書を務めていた。小林氏の選挙では国際勝共連合の人たちがポスター貼りを手伝ってくれたのですが、彼らとの連絡役を担っていたのが古坊氏でした」(当時を知る事務所関係者。古坊氏は自身の信仰について「一個人の問題です」などと回答)
 萩生田氏に理事就任の経緯などを尋ねたところ、
「一一年三月十五日付で理事に就任し、無報酬です。勉強会や会合に参加する中で依頼を受けたと記憶しております。特段宗教的なテーマ等はありませんでしたので理事に就任したことについて問題は無かったと考えます」
 かつて清和会の会長を務め、現在は国権の最高機関のトップを務める人物も教団との関係が指摘される。
 細田博之衆院議長だ。一九年十月、文鮮明夫妻が創設した「天宙平和連合(UPF)」主催の国際会議に参加。UPFは安倍氏が昨年九月、ビデオメッセージを送った教団の関連団体だ。記録映像によれば、細田氏はこうスピーチしていた。
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安倍氏のビデオメッセージ(THINK TANK 2022より)
「安倍総理に早速ご報告したいと考えております。韓鶴子総裁の提唱によって実現したこの国際指導者会議の場は、たいへん意義が深いわけでございます」
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細田氏は韓総裁を礼賛(日テレNEWSより)
 韓鶴子氏は文氏の妻。文氏の死後、統一教会の最高権力者として君臨している人物に他ならない。さらに細田氏は、約二年前に設立された「日本・世界平和議員連合懇談会」の名誉会長も兼務。この議連の顧問にはUPF-Japanの議長も名を連ねている。
 細田氏に教団との関係などについて尋ねたが、期日までに回答は無かった。
 さらに――。
 統一教会にとって、極めて大きな意味を持つ自民党の政治家がいる。名称変更時の文科相、下村博文氏だ。
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名称変更時の文科相
 元文科事務次官の前川喜平氏が解説する。
「霊感商法でイメージが悪化した統一教会は九七年以降、世界平和統一家庭連合への名称変更を文化庁に申請してきた。ただ安易な変更は新たな被害を生み出す懸念もあり、認めてこなかった経緯があります」
 下村氏が就任する約三カ月前まで文科相だった平野博文氏もこう証言する。
「私の任期中に名称変更の申請があったと聞いたことはない。仮にあったとしても、認証などあり得なかったでしょう」
 そうした状況下で、文科相の椅子に座ったのが、下村氏だった。就任から間もない一三年二月、“ある人物”の出版記念パーティに参加している。エマヌエル阿部有國氏の新刊「安倍政権の強みがわかる――日本[精神]の力」(平成出版)。パーティの動画には「文部科学大臣」と紹介された下村氏が、著者と握手する場面が収められている。
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教団元幹部の出版パーティで
 エマヌエル阿部有國氏とは何者なのか。本名は阿部正寿。統一教会によれば「一九七〇年代に教団の広報委員長を務めていた」人物で、現在は保守的な政策提言を行う世界戦略総合研究所の会長を務めている。問題の著書でも日本衰退の原因について、教団の用語を用いて〈神に反抗する「悪魔(サタン)」の存在であること〉と綴っていた。
下村氏と教団には“共通の敵”が
 さらに先週号で報じたように、下村事務所の内部文書には大臣在任中に関連団体幹部から“献金”を受けていたことが記録されている。関連団体の「世界平和連合」の大塚正尚氏(国際勝共連合の会計責任者を兼務)と、世界日報政治部長(当時)の早川一郎氏が、下村氏の後援会「博友会」のパーティ券を計八万円分購入していたのだ。
 それだけではなかった。博友会はパーティとは別に講演会を定期的に開催していたが、その出欠記録によれば、大臣在任中に大塚氏や早川氏、世界日報社長(当時)の木下義昭氏、阿部氏は計三十回講演会に参加している。事務所関係者によれば「会費は一万円」。つまり、出欠記録の通りなら、関連団体幹部たちは更に計三十万円分を“献金”していたことになる。
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世界日報社長がたびたび博友会に参加
 下村氏側にとっても、彼らの存在は重要だった。
「〇九年の衆院選で、下村氏の東京十一区に出馬したのが、統一教会問題を追及してきた有田芳生氏でした。この時、その有田氏に約三千票の僅差に迫られた。以降、下村氏は地盤強化を図ります。特に宗教団体は結束が固く、“集票マシーン”として機能する。統一教会にしても、有田氏は“共通の敵”。下村氏の支援に力を注いでいくことになりました」(自民党関係者)
 そのことが窺える内部文書がある。〈2014選挙名簿〉と題されたエクセルファイル。更新日時は二〇一四年十一月十四日で、衆院選の投開票日のちょうど一カ月前だ。全国の支援者がズラリと並ぶその名簿に以下のような記載がある。
〈阿部正寿 世界戦略総合研究所 会長
 小林幸司 世界戦略総合研究所 事務局次長
 木下義昭 (株)世界日報社 代表取締役社長
 早川一郎 (株)世界日報社 編集局次長 政治部長
 谷尚美 世界平和女性連合 東京第六連合会 事務 局長〉
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下村事務所の“支援者名簿”
 木下氏をはじめ、五人はいずれも統一教会の関連団体幹部。中でも小林氏は一三年から一六年にかけて、四年連続で「桜を見る会」に参加していたという。
 小林氏に話を聞いた。
「(招待は)事実です。安倍さんが(一二年の総裁選に)立つ時に応援したことがあって、その関係の方々が誘われた時に『一緒にどうですか』ということになったと思います」
 さらに書面で、研究所と統一教会の関係を否定した上で、主にこう回答した。
「当団体は文科大臣であられた下村議員に教育再生を断行してほしいとの期待から後援会に登録させて頂き、数回の博友会の会合に参加させて頂きました。選挙戦では選挙区も違うため何もお役に立っていません」
 結果的に一四年十二月の衆院選で下村氏は、共産党候補らに八万票以上の差をつけ、圧勝している。
「下村文科相時代に文科政務官を務めていたのは、上野通子氏や山本朋広衆院議員です。上野氏も山本氏も統一教会との関係が指摘される人物。教団は、こうした文科省に近い政治家に接近を図ってきました」(前出・教団関係者)
 そして翌一五年八月、統一教会から世界平和統一家庭連合への名称変更が文化庁に認証される。そして冒頭のように、盛大なイベントを開催したのだった。
 果たして、そこに大臣の働きかけは無かったのか。下村氏は七月十一日、小誌の取材に〈文化庁によれば(略)大臣に伺いを立てるようなことはしていない〉と全面否定していた。ところが、七月二十一日に囲み取材に応じた際には、
「文化庁の担当者から(申請の)書類が来たと、事前に報告がありました」
 と説明を翻している。
(以下省略、その他も「週刊文春」参照)
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