朝日新聞社の全国郵送世論調査で、安倍晋三首相の積極姿勢とは裏腹に、集団的自衛権の行使容認に対する反対が増えた。憲法9条など平和主義を維持しようとする意見もそろって増えている。昨年の調査から1年足らずの間になぜこれほど変わったのか。▼1面参照

集団的自衛権の行使容認について、昨年と大きく変わったのは男性だ。

特に男性20代は「行使できない立場を維持する」が58%から77%に、男性40代と男性70歳以上も各47%から6割近くに増えている。女性は昨年も全年代で「行使できない立場維持」が多数だったが、今回はさらに高い割合となった。

こうした意識を反映してか、安倍政権に積極的に進めてほしい政策を10の選択肢から三つまで挙げてもらうと、「景気・雇用対策」73%、「社会保障の充実」62%と続き、「集団的自衛権の行使容認」はわずか6%にとどまった。

憲法9条についても、昨年は男性40代以上で「変える方がよい」が「変えない方がよい」を上回り、中でも男性50代は「変える」が55%に上った。ところが今回は、男性50代でも「変えない」が50%で多数になるなど、すべての性・年代で「変えない」が「変える」を上回った。

このような変化の背景にあるのは、有権者の多数は安倍政権の姿勢で東アジアが安定するのではなく、逆に軍事的な緊張が高まると思っていることだ。

安倍政権集団的自衛権の行使を検討するなど日米軍事協力を強めることで、軍事的な緊張が「高まる」という人は65%。「そうは思わない」29%を大きく上回った。集団的自衛権の行使容認に最も理解を示す男性50代のほか、安倍内閣支持層や自民支持層でも過半数が「高まる」と回答。軍事的に脅威を感じる国として「北朝鮮」や「中国」を挙げた層でも「高まる」と見ている人が多数だ。

こうした安倍政権の姿勢は東アジアの平和と安定にとって「マイナスの面が大きい」という人は、昨年の51%から60%に増加。昨年「プラスの面が大きい」と答えた人が多数だった男性20~50代や安倍内閣支持層、自民支持層でも今回は「マイナス」が多数となり、安倍政権を見る目が大きく変わった。

さらに集団的自衛権を行使できるようになったら日本が戦争に巻き込まれるかもしれないという不安をどの程度感じるかと4択で尋ねると、「大いに感じる」52%、「ある程度感じる」36%で「感じる」が計88%。「大いに感じる」は女性20代で70%、女性30~40代でも6割を超えている。

安倍政権の姿勢で緊張が「高まる」という層や戦争への巻き込まれの不安を「大いに感じる」層では、集団的自衛権の行使容認に反対する意見が8割前後に達する。憲法9条を「変えない方がよい」という意見も同様の高さだ。

東アジアの緊張が解けない中で日米軍事協力を強める安倍政権に有権者が危機感を抱き、戦争への不安も現実味を帯びて感じるようになったことが今回の結果に表れたようだ。