2014年4月13日05時00分
核軍縮・不拡散イニシアチブ(NPDI)の外相会合が12日採択した広島宣言は、核保有国による多国間交渉など削減努力を求めたが、核兵器使用を禁止する法的枠組みには触れなかった。日本をはじめ米国の「核の傘」に頼る同盟国と、非同盟国との溝の深さがある。核を持たない国々の間でも、核廃絶への明確な道筋を示すのは難しいという厳しい現実を突きつけた。▼1面参照
参加国の代表が出席した共同記者会見。議長役を務めた岸田文雄外相は、「日本はNPDIの主導国として、核軍縮・不拡散の取り組みを精力的に推進し、NPDIの政治的推進力をいっそう高めたい」と述べた。米国、ロシアの二国間だけでなく、中国も含めた多国間交渉を求めるなど、現実的な核軍縮を進める日本の立場を強調した。
一方、メキシコのヘレル駐日大使は、核廃絶に向けて「何らかの取り決めをつくる必要がある」と主張。メキシコなどが持論とする期限を区切った核廃絶の要求や、核兵器禁止条約に向けた取り組みが宣言に盛り込まれなかったことへの不満の表明だった。
核廃絶への道筋をめぐっては、今回のNPDIで参加12カ国のうち、米国の「核の傘」に依存する日本をはじめとする同盟国7カ国と、それ以外の国との立場の違いが浮き彫りとなった。宣言は、7カ国が共通認識とする「核抑止力の必要性」には触れず、非同盟国が求める核兵器削減のための具体的な方法や手続きにも触れない、あいまいな内容となった。
この立場の違いは、昨年10月の国連総会でも表面化していた。NPDIの参加国のうちメキシコなどは「いかなる状況においても核兵器が二度と使用されない」と、即時使用禁止と読み取れる共同声明に賛同。一方、米国の核の傘に入る国は「核保有国と協力することなしに、核兵器を禁止するだけでは核廃絶は保証されない」とする別の共同声明に賛同した。その溝を埋めるのは、広島宣言でも難しかった。
調整役となった日本外務省幹部は「参加国の半分以上は核抑止力に依存する。共通点を探すのに苦心した」と語る。(菊地直己、中崎太郎)
■米、「核軍縮重視」アピール
今回の会議には、広島に原爆を投下した米国が高官を初めてゲスト参加させた。米国務省は、ローズ・ゴットメラー国務次官を派遣した理由について「米国が(核軍縮の)問題をいかに重視しているか、メッセージを送ることが大切だから」(サキ報道官)と説明する。
非公開で行われた各国外相との12日の昼食会で、ゴットメラー氏は「NPDI参加国と関係を密にしたい」と述べた。来春には核不拡散条約(NPT)の運用を5年ごとに見直す再検討会議が予定される。米戦略国際問題研究所のスクワッソーニ上級研究員は、NPDI参加国のうち、NPT加盟国として発言力が高いオーストラリア、ドイツ、日本など6カ国との連携を特に深める狙いが米国側にある、と指摘する。
5年前にチェコ・プラハでの演説で「核のない世界を目指す」と宣言したオバマ大統領は、昨年6月、ドイツ・ベルリンでの演説で、米国が配備する戦略核兵器の数を将来、1千程度に減らす新たな指針を表明した。オバマ氏の任期は3年を切っており、核軍縮の機運を再び盛り上げたい思惑がある。
だが、核軍縮や核不拡散をめぐる状況は明るくはない。北朝鮮の核開発問題も進展はなく、中国は核弾頭を搭載できるミサイルの増強を図る。インドでは新たに政権を握るとみられる政党が、核兵器の先制使用はしないという核政策の見直しを示唆している。クリミア半島の併合をめぐって欧米と対立するロシアは、核軍縮にも後ろ向きだ。
米国も具体的な動きには乏しい。ゴットメラー氏は12日の広島大学での講演で、「核なき世界の実現には、包括的核実験禁止条約(CTBT)の発効が不可欠」と訴えたが、米国のCTBT批准時期には言及しなかった。新たな核軍縮に向けた米ロ交渉の見通しも示さなかった。
(小林哲=ワシントン、渡辺丘)
■NPDI参加12カ国
日本、豪州、カナダ、チリ、ドイツ、メキシコ、オランダ、ナイジェリア、フィリピン、ポーランド、トルコ、アラブ首長国連邦(UAE)
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