「中道」はいま:公明党結党50年/1(その1) 集団的自衛権 「一体」の学会とズレ
毎日新聞 2014年08月05日 東京朝刊
安倍政権が集団的自衛権の行使容認を閣議決定した後の7月中旬、公明党と支持母体・創価学会は全国の学会員に資料を配った。資料はA3判。学会員となじみの深い劇作家・山崎正和氏ら有識者3人の前向きな評価を載せ、不安解消に工夫した。閣議決定直後は週1600本もあった党本部への抗議電話もほぼない。公明党幹部は「険しい道の連続だった」と振り返る。
「今の流れを、何とか止めてください」。6月、東京・信濃町の創価学会本部で、全国の女性学会員を代表する「婦人部」の幹部が思い詰めた表情で原田稔会長(72)に詰め寄った。
自民、公明両党の協議で、公明党は強気の安倍晋三首相に押し込まれ、結党以来否定してきた集団的自衛権の行使容認にかじを切る決断に傾きつつあった。選挙の主力部隊で「反戦・平和」に敏感な婦人部は危機感を募らせていた。
「学会は平和主義を掲げるが、政治の現場にいる公明党はその時々で現実的な判断をしないといけない」。政治担当の副会長らが取りなした。不満顔の婦人部幹部に、原田会長は「うちはああいう意見を出した。あとは党の問題だ」とその場を収めた。
「ああいう意見」とは、5月に学会広報室が出したコメントだ。行使容認について「本来なら憲法改正を経るべきだ」とする一方、「慎重の上にも慎重を期した議論」を党に求める内容で、「寝耳に水」の党幹部らを困惑させた。
世間から「一体」とみられている支持母体から、難題を丸投げされた公明党は「苦悩の一人旅」(幹部)。心配した党OBの一人は山口那津男代表に電話した。「連立を解消しても最後まで反対した方がいい」。それでも山口氏は閣議決定に応じる道を選んだ。
「真の国民政党になるには国の防衛は避けて通れない」。漆原良夫国対委員長は判断の正しさを訴える。しかし、党内では「支持者に理解してもらうには5年はかかる」とのため息も漏れる。
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自民党の田中角栄元首相は、公明党の野党時代にこう言った。「公明党は危急存亡の時には自民党と同じになる」。保守とも革新とも似て非なる、中道とは何か。公明党の今を追った。