東日本大震災の被災自治体を支えているのが全国の自治体から派遣されている職員たちだ。政府によると、これまで延べ9万人を超す職員が派遣され、現在も約2200人がさまざまな公務にあたっている。
今後数年間はなお多くの「人の需要」が見込まれるだけに、国や地方は要員確保に万全を期す必要がある。将来の災害への備えとして、自治体間支援の重層化を図りたい。
大震災では岩手、宮城県などで役場の機能が津波でまひするケースが相次いだ。岩手県大槌町の場合、約300人の職員の3分の1以上を他自治体からの派遣職員が占める。
多くの自治体は高台移転などに伴う膨大な事務をこなす要員を必要としている。都道府県から派遣された職員だけでなく、身近な行政に詳しい市町村職員がこうした実務の支え役になった。自治体協力の重要さを大震災は再認識させたと言える。
だが、発災から5年近くを経て、応援職員の確保が危ぶまれている。インフラ整備などが進む被災自治体ではこれから数年間の職員需要がピークを迎える。これに対し、派遣元の自治体は職員定数削減などで要請に応じきれずにいるためだ。
2015年度は政府を窓口に被災自治体から約1400人の派遣要請があったが、200人程度が不足した。16年度はすでに約1550人の応援要請が来ている。
国は全国知事会、市長会などに協力を要請している。だが、現状ではこころもとない。
現役職員の確保が難しいのであれば、専門知識を持つOBの期限つき再雇用などによる派遣などをこれまで以上に進めるべきだ。被災地側の希望で「1年間」が多い派遣期間の短縮も、やむを得ない場合は検討対象となろう。
応援で得られた経験を今後に生かすことも大切だ。大規模災害に備え派遣経験を持つ職員を「人材バンク」のように登録したり、派遣先で得た教訓を記録として共有したりする努力を惜しんではならない。
政令市のような大都市が被災自治体のパートナーとなり復興支援に取り組むケースもある。名古屋市は岩手県陸前高田市に重点支援を行い、これまで職員延べ200人近くを派遣した。両市は子どもたちの交流を行うなど関係を深めている。
総務省消防庁によると他の都道府県にある自治体と災害時の支援協定を結ぶ市町村は大震災後に増え、1240団体と全体の約7割にのぼる。災害時支援の欠かせない要素として、平時から協力関係の拡充に取り組んでほしい。
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